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暴かれる心
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不審げに眉根を寄せる僕に、妃羅は寂しそうに言葉を紡ぐ。
「世間の評判は最悪だけど、本当はそんな酷い人間じゃないの」
困り顔の笑みを浮かべ、妃羅は言葉を繋いだ。
「兄さんは、Ωを守りたいと思ってるんじゃないかな……。私が、…妹が、Ωだったから。自分の家族が、虐げられるのが我慢ならなかったのかも」
世の中では虐げられるΩという性。
優秀なこの世の宝たるαを惑わせる、社会の厄介者だ。
「αなのにΩを守りたいだなんて…可笑しいわよね」
αはΩのフェロモンに逆らえない。
だからこそ、優秀なαこそ、Ωを疎ましがり、虐げる。
くすくすと小さく笑った妃羅は、深く瞳を瞬き、落ち着いた声を放つ。
「兄さんは、貴方に惹かれてる。だから、貴方の望まないコトはしない。貴方の幸せだけを願ってる」
無理をして好きになる必要はないという帝斗の声が、脳内に甦る。
僕の意思を尊重し、気持ちを汲んでくれようと放たれた言葉だ。
僕の幸せを、願ってくれている……。
そんな帝斗は、やっぱり僕の運命の相手なのかもしれない。
「貴方は、αが憎いんじゃなくて、愛が欲しかったんじゃないの? 母親から貰えなかった愛……兄さんなら、全身全霊で貴方を愛してくれると思うんだけど」
自分の兄だから、贔屓目に見てるのかもだけど……と、妃羅は小さく笑った。
妃羅の言葉は、僕の心を裸にした。
僕が欲しかったのは愛情で。
αを憎むコトで、与えられなかった愛に、…愛情に餓えた心を誤魔化していた。
違うピースで埋めた心は、どこか不安定で、簡単に楽な方へと靡いていった。
欲していた愛をくれるなら、暴力を振るわれようと、束縛をされようと、僕は平気だったんだ。
僕が翠之に想いを寄せたのは、足りない愛を注いでくれたから、……だったのかもしれない。
どうすれば、僕と帝斗が結ばれるのだろうと頭を悩ませながら、職員に呼ばれた妃羅は、この部屋を後にした。
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