アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
鳴りを潜めたフェロモン
-
昼前に弁当を片手に僕の部屋を訪れた駒野は、帝斗に呼び出されたときとは打って変わって上機嫌だ。
「機嫌、良いね…?」
あまりの機嫌の良さに、思わず問うた。
駒野は、手にしている弁当をテーブルの上に置きながら、口を開く。
「帝斗さんには、全部お見通しだったよ。オレが、その……」
言葉を詰まらせた駒野の頬が赤く染まった。
昨日の情事を思い出し、羞恥したらしい。
「帝斗さんには嘘吐けないから。…ごめんな」
赤い顔のままに、ぼそぼそと声を紡いだ駒野は、申し訳なさげに僕を見る。
僕は首を横に振るった。
駒野が謝るコトなど、何もないんだ。
僕の血が、そうさせただけだから。
「でも、命拾いしたよ。霙さんのコト、楽にしてやれって」
ほっとしたように、穏やかに話す駒野とは対照的に、僕の心は乱れた。
楽にしてやれ……。
帝斗は、僕のコトを駒野に託した……?
言葉の真意を探るように、僕は、駒野を見詰めた。
「傷つけなければ、抱いても良いって。…辛かったら言ってくれれば、…オレで良ければ、相手するから」
ゆったりと近づいた駒野は、ベッドに腰かけている僕の隣に腰を下ろす。
顔を見ているコトが恥ずかしいのか、僕を腕の中へと抱き込んだ。
「辛かったら、我慢しなくて良いから。オレを使ってね」
駒野の手が、子供をあやすかのように、僕の背をぽんぽんっと叩いた。
僕のために開発された薬は、嘘のように身体を楽にした。
「やっぱ、凄いね」
駒野の鼻先が、僕の頚に近寄り、すっと匂いを嗅がれた。
「全然、わかんないや。なんだったんだってくらい……」
すんすんと匂いを嗅がれる行為が擽ったく、首を竦めた。
「あ、ごめんね」
駒野は、慌て顔を離す。
駒野までもを翻弄したフェロモンは、完全に鳴りを潜めた。
「帝斗さんに報告した方がいいよな」
ぼそりと呟かれた駒野の言葉に、瞳を向けた。
「僕が行く。自分で報告しに……」
駒野の仕事を奪うコトになってしまうのではないかと、様子を窺う。
僕の視線に、駒野の顔が柔らかな笑みを浮かべた。
「そうだね。霙さんが直接行ったほうが、帝斗さんも喜ぶよね」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
80 / 116