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愛してはやれない <Side 帝斗
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抑え込んだフェロモンは、隙間を見つけ零れ出る。
俺だけを目指し、濃度を増して、襲い来る。
理性という膜に包まれた俺の本能を暴かんと、抑圧に抗い攻めてくる。
「寄るなっ」
扉一枚が開いただけで、俺を狂わせるその香が強くなる。
近寄られれば、何をしでかすかわからない。
傍に居るのに得られない[運命の番]の存在に、αの本能が活性化していた。
暴走しそうな本能に抗うコトで、精一杯だった。
霙を気遣う余裕など、あるはずもない。
予想外の霙の来訪に、“鎮静剤”を服用していなかった俺の瞳は、血走った。
【遮断マスク】をしていても、肌が激しく…、粟立った。
揺らされたメトロノームは止まり方を忘れ、右に左に振れ続ける。
大事にしたいけど、腕の中に抱き込んでしまいたい。
この腕で抱き締めたいけど、穢したくはない。
駒野に預けた抑制剤の話をされ、的外れな嫉妬心が胸を焦がした。
真っ赤に染まった俺の手じゃ、綺麗な霙に触れない。
触れたら最後。
霙の真っ白なところが、真っ赤に染まってしまう。
綺麗なままで、居て欲しいから。
汚れを知らない駒野の腕の中で、愛され笑っていればいい。
自分が愛してやれないのなら、駒野に頼るしかないのに。
βの駒野なら、αを嫌悪する霙でも、好きになれると思ったクセに。
駒野なら、霙を幸せにしてくれると明け渡した筈なのに。
見え隠れする駒野の影に、勝手に心が焦れる。
冷静になりたかった。
少しでも離れ、意識を逸らす。
霙の姿を見つけては、瞳を逸らす。
それでも、本能は霙の気配を追っていた。
なんの躊躇いもなく、殺めてきたから。
なんの戸惑いもなく、踏みつけてきたから。
そんな俺は、穢れているから。
俺は霙を、穢してはいけない。
愛しては、やれない……。
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