アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
過信しすぎた運命
-
妃羅と霙は、駅前の大型商業施設を訪れた。
2時間ほど、ウインドウショッピングを楽しみ、休憩のために喫茶店に入る。
飲み物を注文し、お手洗いに立った数分の出来事。
席に戻った妃羅が見つけたのは、テーブルの上に無造作に置かれたスマートフォンだった。
きょろきょろと辺りを見回してみたところで、小さな喫茶店の中は死角になるような場所はない。
ウエイトレスを捕まえ、どこへ行ったのか知らないかと尋ねると、男の人と出ていった、と言われたらしい。
「変な人に、連れていかれちゃったのかもって……、私が連れ出したせいだって焦って、艶ちゃんに探してもらったの…」
泣き濡れた瞳で、困ったように俺を見やる妃羅に、艶が言葉を足す。
「妃羅が心配するから、追っかけてみたけど…霙ちゃんは、自分の意思でそいつと……園崎 翠之と一緒に行った。……拉致や誘拐の線はない」
苦虫を噛み潰したように顔を顰めた艶に、俺は、深く息を吐く。
園崎 翠之……。
霙が暗城家に売られる前まで一緒にいた相手だ。
俺は、運命を過信しすぎたのかも知れない。
俺の傍に居ることが、息苦しかったのかも知れない……。
一度騙されたとしても、やっぱりあの男が良かったのかもしれない。
捩じ曲げられるような『運命』など、所詮、その程度だ。
「霙ちゃんが居なくなったのは、妃羅のせいじゃない。妃羅を責めるのは、お門違いだから…って、言いたくてついてきたの」
はあっと疲れたように息を吐く艶に、俺は首を横に振るった。
「責めるつもりなんてない。霙が自分でついて行ったなら、仕方ないだろ」
あっさりと言葉を紡ぐ俺に、艶の顔が再びの歪みを見せた。
「仕方ないで済ますの?」
ぐっと険しく、嫌悪を浮き彫りにした顔で訊ねる艶に、俺は訝る。
「どういう意味だ?」
平坦に紡がれる俺の言葉に、艶が言葉を足した。
「霙ちゃんのコト、連れ戻すなら手伝うけどって話」
艶なら簡単に、霙の居所を探し当てるだろう。
でも。
「いや。放っておいていい」
俺の一言に、艶の顔が更なる歪みを見せた。
「一緒に消えたの、園崎 翠之だよ? あいつの母親が、霙ちゃんのコト、暗城家に売ったんだよ?」
放っておくなど言語道断だと言わんばかりに、艶が噛みついてくる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
85 / 116