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不貞の証拠
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父を探ったところで尻尾など掴めないだろうと、古参の秘書の周辺を、探偵を雇い探らせた。
そこから炙り出されたのは、『矢尻 聡(やじり さとい)』というその年に13歳となった1人のαだった。
聡は、父の浮気の証拠だった。
聡の母であるΩに、一目でいいから子供に会って欲しいと言われ続け、辟易していた。
そこへ、オレがΩの匂いをつけ帰宅したのだ。
そのせいで、オレは殴られた。
苛立ったままに書斎へと引っ込んだのも、母の『Ωに誑かされるようなコではない』という一言が、まるで自分に向けられた言葉のように思われ、憤慨したからだ。
Ωに誑かされたのは、オレではなく父の方だったのだ。
こちらの立場を鑑みたΩが、押し掛けてこないコトがせめてもの救いだった。
秋頃から、古参秘書が側に寄ると、微かに感じていたαの匂いが鼻を突くようになる。
秘書は、まだ13歳…、中学2年の聡を、秘書見習いとして自分の手許に置いたせいだった。
父は、聡の存在を…、αの息子が居るコトを知らない。
父の鼻を持ってすれば、聡がαであるコトに気づいてもおかしくはなかった。
ただ、聡がαであるとわかったところで、父は自分の息子だとは気づけない。
会ったコトがなかったからのだから、当然だ。
古参の秘書は、正面突破では会ってもらえないのなら、裏から攻めるしかないと考え、聡を秘書へと育て、父の傍に置く目論見を実行していた。
父と子という関係を度外視し、一介の秘書として会わせる算段だったのだ。
αである聡には、才がある。
上手くコトが運べば、父の後継は聡となる。
数ヵ月後。
母親の存在を伏せ、秘書見習いとして、聡を父に会わせるコトに成功した古参の秘書。
父は、矢尻の名すら、忘れていた。
秘書見習いとして目の前に現れたときも、聡が自分の息子だと気づけなかった。
大学へと進んではみたが、古参の秘書の企み…、βのオレではなく、αの聡を後継者として据えようという魂胆に、馬鹿らしくなっていた。
実際にオレは、政治に興味はない。
αのような求心力のないβのオレに、代議士の職が勤まるとも思えない。
やっぱり、βはαには敵わない。
そう実感せざるを得なかった。
対照的に、秘書見習いとして働く聡は、めきめと頭角を表した。
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