アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
無意識の逃避 <Side霙
-
連れてこられたのは、アパートの一室だった。
靴も脱がすに振り返った翠之が、ぐっと僕を抱き締める。
帝斗なら、どういう風に僕を抱き締めてくれただろう。
こんな風に、力強くは包んでくれないだろう。
僕を包み込むように、何処と無く戸惑いがちに、優しく柔らかく抱き締めてくれたような気がする。
……僕は、帝斗に抱き締められたコトすらない。
帝斗のその腕がどう触れてくるかは、わからない。
僕は無意識に、帝斗を翠之に重ね比べていた。
―― ガチャン
背後で鍵の閉まる重たい音が響いた。
その音に、翠之に帝斗を重ねていた自分に、はっとした。
「おかえり……」
首筋に顔を埋め、切なげな音を放つ翠之。
会いたかった、寂しかったんだ、と縋るような声色に、どうすればいいのか戸惑う。
僕が、見放した訳じゃない。
好き好んで、翠之の前から居なくなった訳じゃない。
でも、翠之の知り及ばないところで、姿を消してしまった僕は、責められても仕方ないのかもしれない。
ふと身体を離した翠之は、僕の顔を上げさせた。
迫りくる翠之の唇に、僕は無意識に背を反らせ逃げていた。
えっ……?
身体を引いた自分に、驚いた。
そんな僕に、翠之は苦虫を噛み潰す。
「なに逃げてんの?」
懐かしいはずの…、恋しいはずの翠之の匂いに、僕の心が臆した。
僕は、翠之が好きなはずなのに。
僕が好きなのは、…翠之、なのに。
なぜ、逃げた……?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
96 / 116