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僕が選び、望んだコト
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じゅるりと唇を吸い上げ解放した翠之は、顔を離し、苛立ちしかない瞳で僕を見下ろした。
「数ヶ月でもう新しい男か……。αは嫌いだとか言っておきながら、番でも出来た? だから、発情しないんでしょ?」
ぐっと上体を起こした翠之は、後ろ手に僕の股間を握った。
「ぅ………」
目の前の存在が、ただただ怖くなる。
どうすればいい。
どう振る舞えばいい。
焦りと怯えの感情が、胸の底で渦を巻き、股間を、身体を縮ませる。
力任せに捏ねられる股間は、快感よりも痛みを拾う。
「ぃ、……たっ。ゃ、め………」
「番が居たって、霙はΩだもんね。抱かれりゃその気になるよね」
ふっと嘲りの息を吐き出した翠之の手が、スカーフへと伸びてきた。
僕は慌て、その結び目を掴んだ。
「なに拒否ってんの? 拒否るくらいなら、なんで付いてきたの? 霙が自分の意思で、ここに来たんだよね?」
スカーフを守る僕に、翠之は、身体を重ねるコトを拒まれたと苛立った。
このスカーフは帝斗から貰った物だから。
でも、その事実は口にはできない。
そう。僕が選んだのだ。
ここに来るコトは、僕が望んだ。
僕に翠之を拒む権利なんて、有りはしない。
逃げてきたクセに。
着いてきたクセに。
離れて気づく僕は、…バカだ。
帝斗より翠之を選んだのは、僕なのに。
束縛をしない帝斗の優しさを裏切り、愛をくれる翠之の想いを、土足で踏み躙る。
何も言えない僕は、スカーフを握りしめたままに、首を横に振るった。
「ふざけんなっ。何だってんだよっ」
スカーフを取り払うコトに、躍起になる翠之の爪が、僕の手の甲に無数の赤い線を描く。
それでも僕は頑なに、スカーフの結び目を握り続けた。
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