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悪いのは全部、僕だ
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これだけしかないから。
帝斗との繋がりは。
帝斗が最初で最後に、僕にくれた物だから。
指先が白くなるほどに必死にスカーフを守る僕に、ふと翠之の動きが止まった。
「指輪も、捨てたのか」
僕の左手の薬指に触れたまま、翠之は苛立ちを越した呆れの笑みを浮かべた。
「なんで、オレを捨てたんだよ」
呟いた翠之が、僕の髪を鷲掴む。
「ぃっ………」
「髪もっ、指輪もっ……オレもっ」
言葉は徐々に怒りを孕み、大きくなる声量は僕の脳をも震わせた。
「捨ててな……っ」
―― バン……ッ
乾いた破裂音が響いた。
左の頬にジンジンとする痛みが、蔓延った。
捨ててなどいないと放とうとした言葉は、頬を叩かれ、遮断された。
指輪は翠之の母親に奪われ、髪は売られた暗城家に切り落とされた。
僕は何一つ、自分の意思で手放した訳じゃない。
「口答えしてんじゃねぇよっ。好きだったのにっ、……愛してやったのにっ」
―― ぽつり
痛みに赤くなる頬に、一粒の雫が垂れ落ちた。
濡れた感触に見上げた視界には、苛立ちと悲しさに、冷静さを殴り捨てた血走った瞳の翠之の顔。
優しさの欠片が1粒の涙になり、僕の頬を濡らした。
その1粒を最後に、翠之の優しさは渇れた。
何を言ったって、どんなに言葉を並べたって、今の翠之には何も届かない。
「なんなんだよっ」
――ゴ……っ
響いたのは、骨がぶつかる鈍い音。
左の鎖骨から肩にかけ響く痛みに顔を歪めた。
「好きだったんじゃないのかよ! 霙は、オレのもんじゃねぇのかよっ!」
腰から退いた翠之は、引かない痛みに固まる僕の身体を裏返す。
適当に寛げた僕のズボンを下着ごと引き剥がした。
「霙が全部悪いんだ。霙の匂いが、オレを狂わせたんだ……っ」
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