アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
一歩
-
「今日は顔合わせだけで良い。事務手続きはまた明日してもらうので、印鑑と…」
佐久間さんにあれこれ言われている間にも、俺はメモを取りつつ上の空だった。
だって、扉1枚隔てた向こうに、日本が誇るトップアイドルがいる。
更に隣にも、メンバーであり、俺の推しメンである穂波さんがいるのだ。動揺しない方がどうかしてる。
「ねぇ〜さっきからうるさいよぉ…あれぇっ」
不意に目の前のドアがガチャッと音を立てて開く。
「あ〜っ!この子アレでしょ、菊田くん!俺鈴鹿英一ね、よろしく〜!えっなんかめっちゃ緊張してない?ウケるんだけど!」
「ちょっと英一、あんまりいじめてやるな…」
「いじめてないもん!てかゆーなんで一緒にさっくんから説明受けてんの?保護者?」
「人の話を聞いてくれ…」
ほ、本物の鈴鹿英一だ…目ぇデカ…ほっそ…同じ男とは思えない…
「ねぇ聞いてる?あっそれともぉ…ボクの可愛さに、メロメロになっちゃったぁ!?キャハハ!」
「英一!もう…ごめんな菊田くん。」
「い、いえ、そんな、お、俺もビックリしちゃって…」
そんなこんなでごちゃごちゃやっていると、この状況での何かを伝達するなど不可能と判断したらしい佐久間さんが、溜息をつきながら手帳を閉じた。
「…まぁ、事務的な説明は後で良いだろう。菊田くん、扉を開けなさい。…五人が揃う、初めての瞬間だ。」
『揃う』、なんだ。まるで、俺で完成みたいな言い方だな…っていうのはさすがにちょっと自意識過剰?
「は、はい。」
オフィスによくある簡素なドア。でも、これを開けたらきっと、もう元には戻れない。
スッと息を吸い込み、俺はノブに手をかけた。
「は、初めまして!菊田浩司って言います!よろしくお願いします!」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 10