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(結婚しようって告白されたばっかりなのにね)
薬指に付けている指輪に触れる。
とぼとぼと町並みを歩く。
気づけば学校の前に来ていた。
丁度下校時間らしく、ぞろぞろと生徒が出てくる。
建物の影に隠れ、クラスメートにばれないようにした。
(学校行けば良かったな)
朱と奈緒の話によると、今日から担任が産休に入るため、新しい先生になるらしい。
(見たかったなー新しい先生)
そんなことを思いながらまた町並みを歩く。
「あ、祐くん!」
後ろから凪さんが走ってきた。
「凪さん……俺をさがしにきたんですか」
「そうだけど、僕は個人的に。突然いなくなって心配したんだよ?」
「和樹さんと誠はなんで俺が居なくなったか理解してないんです」
「………僕は何となくわかるよ」
意外な返答だった。
「兄さんってさ、束縛強い方だからなんでもかんでも自分の言うとおりにしないと、自分から離れていかないか凄く心配なんだよ。今だってね?僕が個人的に探しにいくとき、兄さん凄く切羽詰まった顔してた。だからあんなに人をだしたんだろうな。凄いお金使ってたよ」
「…………」
「好きでお仕置きとかしてるんじゃなくて、自分のだって体に覚えさせたいんだよ。兄さん、こんなに束縛強くなったのはあの事が原因だから………多分今頃泣いてる。今日ずっとご飯食べてないんだよ」
(あの事…?)
「……誠は?」
「誠くんは、立場上断れない。雇われるがわだから。誠くんも顔真っ青にして今も町中探し回ってる。本気で悪いと思ったんだろうね」
「そんな……」
そんなことになっているとは知らなかった。
「早く家に帰ってあげて。あのままだと兄さんが追い込まれちゃう」
「っ、」
家まで走った。息が切れても、足が痛くなっても、電車に乗らずに走った。
一刻でも早く、和樹さんに謝らなくちゃ。
家の前に着くと、玄関を開けた。
(静か……)
リビングに行くと、テーブルの上に涙のあとがついた、俺と和樹さんの写真があった。ソファーには横たわって子供のように泣き腫らした顔をして、うずくまって寝ている和樹さんがいた。
(ずっと泣いてたのかな…)
和樹さんの腕を一旦どかして、胸と腕の間に入る。
(温かい)
途端に眠気が襲ってきて、深い眠りについた。
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ふと抱き締められているような感覚がして目が覚めた。
目を開けると、和樹さんにきつく、きつく抱き締められていた。
「……和樹さ…ん?」
「…………」
「くるしっ、い」
「ぁ……」
やっときつく絞めていた腕が和らぐと、自分から和樹さんに優しく抱きついた。
しゃくり上げる背中をさする。
「……ごめんなさい」
「………」
肩が冷たい。きっと泣いているんだろう。
小さく鼻を啜る音がする。
「祐っ、おれ"、のこと、きらいっ?」
「………嫌いなわけない。」
「おれのことっ、おいて"いかっ、ない?」
「……絶対置いていかない。ずっと一緒。」
「ほんとうにっ?……うっ、ぐすっ、うぅぅぁぁっ、」
大きな声を上げて大人げなく泣く和樹さんを、暫く抱きしめて自分も泣いていた。
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