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周りがスローモーションのように、ゆっくりと時間が流れている気がした。
長は勢いを押さえきれず、俺はもろに殴りを食らった。
「うぐッ!……」
そのまま横に倒れる。口の中に血の味が広がる。
「祐っ、祐っ!」
和樹さんが俺に駆け寄り、抱き抱えてくれる。
「……かずきさ……このままじゃ………和樹さんが死んじゃう……」
「俺の心配なんてしなくていいんだよっ!体弱いのにこんな真似するなっ!」
「ごめんなさっ……」
途端に涙が溢れて視界が曇る。
和樹さんが無事で安心したのか、傷が痛いのか、怒られたからなのか。
「俺が女をヤったのは認めてやるよ!でも…家族に……祐に害を成すやつは許さねぇっ!」
「だ、だめっ、和樹さんっ……」
立ち上がって殴りにかかろうとした和樹さんを止めるように慌てて服の裾を掴む。
しかし、よろけて掴んだまま床に倒れてしまった。
「……家族?そいつ、使用人じゃねーの?」
「大事な、大事な…恋人だよ」
「なるほどな。……まぁいいだろ。お前ら、今回は逃してやれ。女なら俺がいくらでも紹介してやる」
霞む視界に沢山の声が聞こえた。
「祐…ごめんね………」
そういっておれを抱き締める。
(一回殴られただけでこんな有り様だなんて……情けないな、俺)
そんなことを思いながら大丈夫だよと言うように抱き締め返した。
「ねぇ、橋谷……って人。祐くんもろに殴り食らったからヤバイかもよ」
「………」
「お頭の強さ知ってるでしょ。体弱いならなおさらだよ。医務室連れていくからついてきて」
「………信用できるかよ」
和樹さんが俺を一層強く抱き締める。
「お頭には許可取ってるから。早くしないと祐くんが可哀想だよ」
弱っている俺を覗き込んだ。
「なおきさんは…信用できます…よ」
喋ると、口の中が切れているのか痛かった。
「………早く案内してくれ」
倉庫から出て車に乗り込む。
「5~10分くらいで着くから。はい、これ応急処置」
そういって保冷剤を手渡した。
和樹さんが俺の頬に当てる。
突然ヒヤッとして驚いたが、痛みは少しましになった。
「……痛い?」
「大丈夫…です」
「着いたらまず口ゆすごっか」
車を走らせること約10分。
立派な門がある、とても大きい平屋についた。
「ついたよ。橋谷はそのまま抱っこしてこれる?」
「…あぁ」
俺を抱っこして車を降りると洗面所へ向かった。
「口ゆすいで」
少し……いや、かなりしみて痛かったが言われたとおりにゆすぐと、そのまま部屋へ通された。
「じゃあちょっと見せてね……腫れてるけど湿布……いや、頬だし冷えピタの方がいいか」
傷になっていたらしく、ガーゼを貼って固定すると上から冷えピタを貼ってまた固定した。
「はい、おっけー。一日に一回くらい、腫れが引くまで交換してね」
「ありがとうございます…」
「ついでに君も」
そういって和樹さんの傷まで手当てしてくれた。
「じゃあまた機会があったら沢山話そうね」
「…祐、いつの間に仲良くなったの?」
「和樹さん待ってる間に……」
「はいはい、おうちに帰ってから沢山話してね」
「家まで送るよ」と言われたが、遠慮して迎えを寄越すことにした。
「…ありがとうな。名前は……」
「なおき。…じゃあまたね」
手を降ってくれたので車の中から振り替えした。
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