アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
108
-
「大事な人の話もあるんだ」
和樹さんが出てきて自己紹介をする。
「初めまして。橋谷和樹と申します」
今度は営業スマイルなんかじゃなく、俺にも見せるようなはにかむような笑顔だった。
「記憶を無くしてから祐さんの保護者として同居させていただいていました」
「それはそれは…ご迷惑おかけしました…」
「いえいえそんな。祐さんと過ごしてからとても楽しい日々でしたよ」
このままだと和樹さんの俺語りがすごいことになりそうなので会話を区切る。
「それでね、父さん。おれ…和樹さんと付き合ってるんだ」
「………なんだ。最初からそう言ってくれればいいじゃないか」
そういって高らかに笑いだす。
「通りで橋谷さんが現れたとき幸せそうな顔するわけだよ。それで?報告するためにわざわざ父さんに会いに来たのか?」
「…そんな顔に出てる……?………まぁいいや。それだけじゃないよ」
「記憶失ってからの思い出、父さんにも聞かせてくれよ。ついでにお兄ちゃんとのことも。ほら、家に入りなよ」
少し躊躇いがちに足を踏み入れる。
「遠慮することないさ。祐の家でもあるんだ。…………おかえり。祐」
「……ただいま、父さん」
少し恥ずかしかったが父さんの嬉しそうな笑顔に少し心が和らぐ。
リビングのソファーに和樹さんと座り、父さんが飲み物を持ってきた。
「さてと、まずは祐の話から聞こうか」
「……実は…和樹さんと結婚することになって……」
「もうそこまで行ったのか。……父さんは良いと思うよ」
てっきり何かしら言われると思っていた二人は唖然とした。
「なんだよ。二人がそれで幸せになれるならいいさ。それに祐が信用できる人なら父さんも信用する」
「…ありがとうございます」
和樹さんが頭を下げる。
「もちろん結婚式は呼んでくれよ……?」
「あはは、もちろん。ちゃんと呼ぶよ」
少しの沈黙が流れ、突然父さんがなんとも言えない顔をした。
「祐……背中の傷は大丈夫か…?」
話を聞くと、父さんはおれとお兄ちゃんが消えてから反省し、数年間ずっとその事ばかりが気になっていたらしい。
「凄く最低なことしてたよな…母さんが亡くなってからショックで頭がおかしくなってたのかもな」
俯いてぽつりぽつりと話す。
「父さんが悪いわけじゃないよ…思い出したけど俺が誕生日ケーキを母さんに頼んだせいで……」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
109 / 187