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『成長』
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あれから30年(人間で言うと6年 )が流れ
雨は6才、兼都は8歳
雪都は19歳になった。
当時25歳であった彼女も
今や50は過ぎている。
これが人間が吸血鬼を産んだことの
悲しき事実なのだろう。
(……………何をやっているんです…)
「ゆきー」
「…雨、どうしました?」
「手伝うよ?」
雪都が手にした洗濯物かごから
衣服をとり
それを懸命に干そうとする雨に思わず笑みがこぼれだす。
「ほらーかなともやれよー」
「は?やんねーし」
「やれよー」
「うわっやるから寄るな!!ちかいっ」
今じゃこの二人が雪都の幸せそのものだった。
雪都は雨に両親のことを
何度か話して聞かせた。
それは、雨の元にいつ両親が帰ってきても良いようにだった。二人はいま、事情があって遠くに出掛けているが、いつか迎えに来る、と。
だが待てど待てど二人は帰っては来なかった。
最初のうちは
玄関先でうろうろしてた雨も
最近はそうしなくなった。
一番甘えたい時期に
母親がいない辛さは
兼都がよく知っている。
彼等の母親は兼都を生むと同時に命を引き取ったのだ。だから兼都は母親というものを知らない。
もしかしたら、時雨を母のように慕っていたのかもわからない。
そんな似た者同士の彼らは本当の兄弟のように仲が良かった。
(零、あなたまでも何をやっているんでしょうか。さっさと迎えに来て、抱き締めてやれば良いものを…。)
嫌な予感は、過らないよう
頭の奥へ捩じ込んだ。
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