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『全てを識る時』
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本当は疑問だった。
記憶がないことが、
雪都さんたちと俺の関係が。
でも知りたいとは思わなかった。
興味なかったから。
雪都さんは言った。いつ雨のお父さんが来てもいいように
全力で殴る準備してなさいって。
父さんを知らなかった。
母さんを知らなかった。
でも雪都さんがいろいろ教えてくれた。
飄々として厄介人だけど
誰より他人に優しい父さんのこととか
父さんをうまくコントロールして男気溢れるやさしく綺麗な母さんのこと。
そして、必ず帰ってくるからと……
でも俺には母さんが人間だということは絶対にいわなかった。
“男の方も馬鹿だよな”
“人間なんかと堕ちたばっかりに”
あいつの口から出たのが事実なんて
認めたくない。
でも
認めるしかなかった。
なんで俺がいつも知らない奴らに
吸血され犯されるのか
わかってしまったから。
“半端ものが抵抗すんなよ”
“こいつならお咎め無しだからな”
………母さんが人間だったから
か。
吸血鬼と人間の恋は御法度なくらいしってる。
それでも
母さんも父さんも
俺の、誇りだ。
二人を悪くいう奴らを
侮辱するやつらを
みなごろしにした。
そして
『もうやめろ。少年。
零の子か。
道理で今宵は雨が止まぬ。』
『アンタ……だれだ……』
雨に打たれ闇に立つそいつは
今までの奴らとは違い強さが滲み出ていた。
『私のことなど知らなくて良い。
お前に処分されるべき者だ。』
『………』
『 すまないな……お前の両親は俺が処分した。 』
一瞬。
その時の俺は何も考えていなくて。
ただめちゃくちゃに
ひたすらに絶命させた。
俺の動きなんて読めるであろうに
俺の刃を真っ直ぐ動じず受け止めたんだ……。
『お前は俺が処分する』
なぜ気づけなかったんだろう。
目の前の殺気を放つ少年は
あの時俺が手にかけたあの人に
よく似ているのに。
なぜ気づけなかったんだろう。
あの時手にかけたあのひとは
その子を庇っていたことに。
なぜ……なぜ……
「なんで俺はっ………今までこんなことを忘れていた………っ」
何も覚えていない俺と
どんな思いをかかえて式は
一緒にいた?
罪悪感?復讐?
「雨。オレは………謝りたかった。ずっと。」
そうだ
式は
「ごめん。雨……本当にごめん……」
式は俺を恨んでなんかいない。
「なんで……おれもお前の父さんを……」
「ちがう。
俺の父があの命令を発しなければ
俺が君の両親を刈らなければ
君はその手を汚すことはなかった……
雨は何も悪くない。君に罪はない。」
俺は思わず式の肩を両手で掴んだ。
いつも大きいこの男は
今はとても小さく見えて。
「なんでだよっ
俺が悔しいのは………っ」
俺が何よりずるいのは
「お前はずっとその罪悪感を抱えて俺の傍にいて!
俺が何も知らずお前の傍にいたこと!」
涙で歪む視界は
俯いた式の表情を隠した。
「ごめん……ごめん式っ。
父さんのことも……
今まで一人でそれを背負わせたことも……っ
ごめん……」
抱きしめた大きな体は震えていた。
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