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『鍵を握るひと』
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……雨が降る。
まるで俺の心のよう。
雨がおれと、まるで同化しているように
俺の心を表す。
不安定に、弱くなったり、強くなったり。
式に隣に寄り添い手を繋ぎ
涙が乾くのを待った。
数分くらいそうしていただろうか。
「………共鳴。」
「ん?」
「俺の能力。
人の思いや記憶をかんじとれること。」
小さな声で再び式がゆっくりと
話はじめた。
「………」
「君のお父さんの記憶
可愛い赤子を抱く
君たちの両親が見えたんだ…
……すごく後悔した……」
「そう……」
「君の記憶。途切れ途切れだったけど
彼らをひたすらに待つ君がとても哀しげで、切なくて。
すぐに理解したよ。
君はあのときの、赤子だと。
君に殺されるならいいやって思ったのに。君の目はもう、俺を写してはなかった。そこに復讐の色はなかった……だからすぐにわかった。
……父さんが俺の身代わりになった。」
「………ごめん…」
「ううん、それで良かった。
そのおかげで俺はキミと出会えた。殺しあわなくて済んだ。」
「…。」
「雨、言ったよね。自分が何も知らずに俺の傍にいたのが悔しいって。
……そうじゃない。覚えてなかったのは雨のせいじゃない。
君は……記憶を消された。」
「え…?」
「あの後…全てを成し終えた君は、自らに、刃を向けたんだ……。
俺は君を死なせたくなかった。だから咄嗟に呼んだ。近くで全てを見ていたあの人を……」
“………緋色っ、!この子を!!”
“わかっているよ!………雨をこっちへ!”
「そしてお願いしたんだ……」
(そう、お願いした。……
だけどあの人……)
「なんで、雨の名を……?」
突如1人何かを呟き目を見開く式に首を傾げた。
俺の記憶が消されたとか、誰に消してもらったとか聞きたいことはあったけど、
式はそれきり考え込んでしまい聞きそびれてしまった。
別にいい。それでも、少しずつ記憶は戻ってきてる。
それに今は……
これからも今までどおり式と笑って過ごせたら……俺はもうそれだけで。
でもその時聞きそびれたそれが
本当に俺が知るべきことだったこととは
俺は知る由もなかったのだ。
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