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『さみしいなどと』
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緋色sidestory
俺ともう一人は同じころ生まれた。
腹は違えど血筋は同じ。
俺とあいつが、ただ唯一違ったのは
その家系。
俺は貴族家系に生まれ
あいつは放浪組の愛人である女から生まれた。
俺は両親には愛されなかった。
与えられたものをこなし満足する内容で返す。それしか存在意義を示せなかった。
一方であいつは
家族に可愛がられ愛されていた。俺がそれを知ったのは
ある程度の事が理解できるようになった歳に、帰ることが年々に減る父の後をつけた時だった。
母は毎日泣いていた。
なぜ私の元へと帰ってこないのかと
私に愛想がつきたのかと。
どうでもよかった。でも母の涙を見ると
父への殺意が芽生えたことも何度かある。
愛人の方の腹に第二子が宿った頃だろうか。
父の愛人の存在が俺の母にばれ
母の両親まで知れ渡り処刑対象にされた。
母のプライドが許さなかったのだろう。
慈悲の人かけらも感じない残酷な処刑だったのを今も覚えている。
膨らんでいるはずのお腹が凹んでいるということは出産後だったのだろう。
ばらしたのはほかの誰でもない、
俺だ。
父が嫌いだった。
父しか見えない母が嫌いだった。
俺にはない愛情を知ってる
同じ能力を持つあいつが大嫌いだった。
誰も愛せない自分が嫌いだった。
あれから何十年たっただろうか。
さみしいなどと
思ったことはない。むしろそんな感情持ち合わせていない。はずだった・・・・・
『お兄さん、泣いてるの?』
降りしきる雨で雨宿りしてる時
隣の方から声がした。
声の方を見れば
綺麗な蒼色の髪をした少年だ。
またその少年は同じことを問い出す。
『お兄さん、さみしいの?』
『・・・・・ははっ寂しくなんてないよ‥』
乾いた笑いは自嘲にもにて。
『オレは、さみしいんだ。おんなじ目をしてるお兄さんも、きっとさみしい。』
さっきよりも弱々しい声で少年は続けた。
これが俺と雨の最初の出会い。
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