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『決心』
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しかし恐れていたことが起きてしまった。
雨を襲ったうちの一人が
雨に全てをばらしたのだ。
緋色は気づかなかった。
気づいたときにはすべてが遅かった。
式も式の父親も
雨も
誰の心も救えなかったのだ。
あろうことか全てを終えた雨が
自らに刃を向けたときは
身体が固まって動けなかった。
『………緋色っ、!この子を!!』
その声にはっとし咄嗟に叫ぶ。
『わかっているよ!………雨をこっちへ!』
降りしきる雨の中で自殺を図った雨を放り投げた式からキャッチしその手から刃を奪い取り抱き上げる。
雨と目の焦点が合わないことから
最早雨には生きる希望がないことが読み取れた。
『雨?俺がわかるかい?』
雨でへばりついた前髪をかきあげ
青い唇に、手を触れる。
やっと平常心に戻った雨が薄い唇を動かした。
『ごめん、・・・・・こんなことするつもりじゃ・・・・・ごめんなさい。・・・・・ごめんなさい・・・・・緋色、俺を』
ころして…
そう微笑み懇願する雨に心が軋み声を上げる。
『何も考えなくていい。
俺の側にいることだけを考えればそれで。
俺はもうお前のそばを離れないから。
ねえ雨。
オレと共に生きよう。どんなことからもオレがキミを守ろう。』
安心したかのように
雨は瞳を閉じ
そのまま
この事件の記憶だけを消し
ひとつの決心をした。
雨を雪都の元から奪い取ってしまおう。
嫌いな父親の嫌いな子供の元から
俺の大切なこの子を。
全ては雨を守ってやれなかったあいつのせいだと
あいつを心の中で憎んだ。
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