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『枷』
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学校へついた頃にはとうに3時間目が始まっていた。
式は少し遅れると言って家に残った。
俺の頭の中では同じことが
ぐるぐる回っている。
式が好きだ
でも緋色が大切。
緋色に式が好きだといえば
きっとあの人は傷付くだろう。
もう緋色に突き放されるのは嫌だ。
自分でも腹が立つほど
自分の考え方が嫌だ。
これは単なる我儘だ。
この場所にいたいからってだけの
自己満足にすぎない。
頭の中が回転する。
刹に会いたい。
こんな時相談に乗ってくれるのは
いつも刹で。
(刹……お前いつになったら帰ってくるんだよ……)
そうだ、刹も俺のせいでこの家を
出ていった。
俺のせいで……
ここはどんどんどんどん
変わっていく。
俺のせいで____。
(______俺は何のために居るんだろう)
ドクン、と血が乱れるのを感じた。
な、に……
「雪都さん………」
『雪都!おれもなんかてつだう!』
「雪、と……?」
『もういいっ
おれなんかすてられたんだもんッ
なんで俺だけ置いてったんだよ!
俺なんていらなかったんだろ?!』
『雨……。貴方の父親は
とても自己中な人でね
でも、強くて他人思いで
貴方のお母さんも雨も
すごく愛していました。
だから、そんな人が
貴方を捨てるなんて
絶対に有り得ないんですよ。
どうか、そんな悲しいことを
言わないで下さい。』
初めて見た
雪都の悲しそうな顔だった。
「、」
なにかの枷が外れた途端
雪崩るように
記憶が押し寄せる。
それは
雪都と兼都と過ごした日々
そして
「い、たい……痛い……」
自分が受けた全ての
屈辱と
その感触。
まるで記憶が自分に
何かを知るべきだと
諭すかのようだった。
「雪都はずっとずっと
父さんの代わりになってくれていた。
全部じゃない、けど……おもい、出した。」
思い出して気づいた。
緋色との
記憶だけが
まだ 戻らない。
「会わなきゃ……」
雪都に 会わなければ。
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