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怒涛の中間試験が終わり僕と好田は三田センセイのおかげでなんとか追試を免れることができた。
そして見上げていた空の色が少し濃い青に変わり始めた頃。
季節は梅雨を過ぎて初夏の走りを迎えていた。
その頃になると僕らはなんとなくつるむ相手が変わっていた。
好田は気付けば男子に囲まれるようになり…ってまあここは男子校だからそれは当然なんだけど。
…とにかく色んな人とよく一緒にいるようになり、そして僕はそんな好田を三田とぼんやりとみていることが多くなった。
「ねぇ三田、あの取り巻きはどこの人達?」
「あれは確か卓球部じゃないかな?」
「卓球!」
スポーツ万能の好田はホントに万能ならしく。
出会った頃から数えたら…ウチにある運動部のすでに半分以上の助っ人をこなし終えていた。
「好田って昔からあんなカンジ?」
机に座ってニカッと笑う好田を指差しながら三田をみる。
すると彼はふっと優しい顔付きになって…どこか遠くをみるようにして。
「昔からそうだったよ。」
そう言って好田をみつめた。
「アイツちっさい時からガキ大将みたいな感じでさ。あちこちで喧嘩したりしてたんだけど、気が付いたらその相手がいつの間にか遊びにきてたりしてた。」
「へぇ…」
言ってる側から好田とはちょっといわくのある垣田くんが近付いてきて…やっぱり仲良さそうに話してる。
「好田はさ、魅力的なんだよきっと。なんていうか…キラキラしてるっていうの?」
そう言って三田は眩しそうに目を細めた。
三田の言うことは…なんとなく分かる気がする。
口は悪いし態度もそんなにいいとは思えない。
だけど…多くを語らなくても気付いてくれたり説明しなくても読んでくれたりする。
そんな好田をみながら僕は…自慢したいような、隠していたいようなそんな気持ちになった。
いつもと変わらぬ帰り道。
好田が大きく伸びをしながら肩と首を回して。
「あーあ…もうすぐ夏休みだなぁ!」
と言うと三田はそんな好田をみながら静かに笑って。
「その前に、期末な。」
そう言って空を見上げた。
「せいぜい頑張るこったな。」
「なんだよ三田センセー!今回も一夜漬け付き合ってくれんだろ?」
そっけない態度に食ってかかる好田の頭に三田がチョップを落として。
「せっかく教えてやろうって言ってんのに寝るとかないから。今回はお仕置きだ。」
「げ、マジでか!てかスゲェお仕置きだな。」
チョップされた頭を撫でながら好田は渋い顔をした。
「それは半分冗談。だけど中間は点数がイマイチだったからさ…ちょっと気を引き締めようと思ってな。」
苦笑いをした三田をみあげて僕は気付く。
「そうか…僕らと違って三田ってば進学組なんだっけね。」
ウチの学校は二年生から進学、普通、就職とクラスが分かれる。
僕はまだ決めていないけど三田は進学で確か好田は就職だから。
「こうしていられるのも…あと少しなんだね。」
そう思ったら急に切なくなった。
しょげる僕の頭にポンと掌が添えられ顔を上げるとその手の主は好田で。
「まだ二学期も先の話じゃんか。それまでグチャグチャに遊んでやるから覚悟しとけよ?」
「え…ちょっ、わっ!?」
言うなり好田は僕の髪を高速でわしゃわしゃとかき乱し始める。
それに負けじと抵抗を続ける僕をみながら三田は楽しげに笑った。
◇◆◇◆◇
着ている長袖のワイシャツの袖を折るようになり、半袖を着始めた頃。
学期最後のイベント期末試験が行われた。
僕と好田はといえば…予想通りというかなんというか。
…二人仲良く追試の判定を受けた。
「……なにやってんの。」
低い低い三田の声に僕と好田はエヘッと笑ってみせて。
「『エヘッ』じゃない!お前ら揃ってなにやってんだって言ってんの!」
バシバシッ!
持っていたテキストで僕らの頭を叩くと三田はやっと落ち着いたらしく…ふう、と息を吐き出すと。
「追試まで勉強みてやりたいけど…俺、これから進学塾通いになるんだ。」
と、少し低めの声でそう言った。
「大丈夫だよ三田。」
「そうそう。これから追試までしばらくはセンセイ達が勉強みてくれるっていうからさ。」
そう言うと三田は少し安心したみたいにホッと息をはいてから僕らをみて。
「まあ…追試でコケないようにちゃんと頑張れよな。」
そう言ってまた溜め息をついた。
珍しく怒った三田に僕は少なからず影響されて追試を頑張ろうと心に決めた。
その日から始まった追試生対象のお勉強会は一番前の席で受けて、そんな僕に触発されたのか好田も真面目に授業を受けていた。
そして追試当日。
…というかこの日は同時に一学期の終業式でもあるんだけど。
ホームルームを終えた僕と好田は三田に送り出されて追試会場である“生徒指導室”へと足を踏み込んだ。
『主要五課目・プリント十枚。』
それを終わった順から帰っていいとか…結構鬼畜。
だけど僕らはそれを目の前にしても臆せず、終了順位も結果の順位も申し分ないラストで締めくくり…見事、三田からのお褒めの言葉をいただいた。
「よしよし、二人共よく頑張った!やればできるじゃん!」
得点が良かったとかそんなんじゃなく、少なくとも僕は三田に褒められたことがなによりも嬉しくなによりのご褒美だった。
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