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「三〇二、三〇二〜っと」
「翼、ちゃんと前見て歩きなよ」
「ハイハーイ…と、ここだ」
要と合流した二人は清治の知り合いの医者に挨拶をして面会の許可を貰うと、早速その彼がいるという部屋に向かった。
広めの個別部屋である三〇二号室のプレートの下に書かれた名前を確認して、翼はなんの躊躇いもなくスライド式のドアの取手に手を掛ける。
「ちょっと翼、ノックが先でしょ?焦りすぎ」
子供みたいだと呆れた顔をする要だったが、弟が今日をどれだけ楽しみにしてきているかを知っていた為、兄という立場として念の為言っているだけだった。
要自身、翼と同じように家族が増えることに喜びを感じでいるのは同じである。
「二人とも、楽しみなのはいいけど初対面で困らせないようにね」
「分かってるよ父さん」
要が父の言葉に正直に頷くと翼がそのタイミングを見計らったように扉を開けた。
夕日が差し込んだ病室はほんのり赤く色付いていて、オレンジ色に染まったベッドの上に彼はいた。
ぼんやりと窓の外を眺めていた彼の視線が不意に揺らいで三人の方へと向けられる。
日焼けを知らない白い肌、甘栗色の真っ直ぐな髪、長い睫毛に縁取られた色素の薄い緑がかった伏し目がちな双眸。
そこに日本人らしさはあまり感じられず、その容姿が纏う雰囲気は何処か浮世離れしていた。
要と翼が驚きに足を止めると先立って清治が彼に近付いて話し掛ける。
「初めまして、悠君。今日から君の家族になる千歳 清治だ。それでこっちが、」
清治がそう言いながら後ろの二人に目をやると、翼はいつもの調子を取り戻したように我に返ってヒラリと手を挙げた。
「はいはーい同じく、千歳 翼!よろしくねハーくんっ」
「もう翼…、既にあだ名付けてるし…。まぁいいや、僕は千歳 要。よろしく、悠」
少しばかり体勢を低くして目線を合わせながら要は口元に淡い笑みをたたえる。
近くで見るとよりその整った容姿に目がいった。
元々はイケメン俳優として名を馳せていた父親譲りの容姿を持ち合わせている二人だが、新しい家族は今までに出会った人間の誰よりも綺麗だと思った。
悠は三人の自己紹介を聞いて何か大きなアクションを起こすことは無かったが、少しばかり開いた小ぶりの唇が僅かに震えていた。
次第に目が潤み今にも泣き出しそうな顔をする。
「…ハーくん?どうしたの?」
違和感を感じた翼がそっとベッドに近付いて悠の頭を躊躇い気味に撫でると、悠は三人の姿を瞳に映してポツリと言葉を零した。
「…して、くれるの…?」
「え?」
明瞭に聞き取ることが出来なかった言葉をもう一度聞き返すと悠は顔を歪めることも無く、溜まっていた涙を静かに零した。
「ーー俺のこと、殺してくれるの…?」
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