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次の日、仕事で面会に行けない清治に代わって翼と要は大学終わりに病院へ向かった。
「昨日は時間無くてあんまり話せなかったけど、今日は沢山話せるねー!」
「…そうだな」
悠に会えるということでウキウキとしている翼とは対照的に、要は昨日のこともあってなのか何処か浮かない顔をしていた。
そんな要を横目に見て翼はほんの僅かに目を細めたが、翼は特別何か言うことも無く視線を落とした。
「ハーくんっ、来たよー」
快活ないつもの調子で病室のドアを開けた翼は真っ先にベッドへ向かう。
カーテンの向こうにいた悠はベッドの上で膝を抱えたままぼんやりと外を眺めていた。
翼の声に反応して少しばかり顔がこちらを向き、硝子玉のような双眸が翼と要の姿を捉える。
二人と目が合うと悠は気まづそうに目を逸らしてサラリと髪を揺らした。
「…こんにちは」
「もー、ハーくんってば水臭いよ?家族なんだからそんな気使わなくていーの。あ、俺のことは気軽に翼オニーチャンっとでも呼んでね〜」
嬉しそうに手をヒラヒラと振った翼だったが、そのテンションの高さに追い付けないのか、悠は黙ったまま迷惑そうに眉間に皺を寄せた。
一方通行なコミュニケーションの取り方に要は仕方ないと溜息をつきながら前のめりになっていた翼の肩を掴んで引き戻し、助け舟を出す。
「翼、悠が困ってるよ。…悠、こんにちは。えっと、僕の名前覚えてる?」
「…要、さん」
「そうそう。僕のことも好きに呼んでくれて構わないから。呼びやすいように呼んでくれればいいよ」
穏やかな口調でそう言って頭を撫でれば悠は小さな声でん、と首肯した。
翼はその光景を意味ありげな表情で見つめてから、誤魔化すようにパッと笑う。
「要ばっかりずるいよー。ハーくんっ俺とも仲良くしよ!」
「……」
悠は再び身を寄せてきた翼から気持ち距離を置いて目を伏せた。
その態度に翼はダメージを受け頭に石をぶつけられたような顔をする。
「えぇなんで俺にはそんな塩対応!?」
「ふっ…」
「ちょ、要笑うとか酷くない!?」
思わず込み上げてきた笑みを零す要と拗ねたようにその要の肩を小突く翼の顔を交互に見て、悠は不思議そうに首を傾げていた。
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