アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
11.
-
「…今読んでる本、清治さんがくれたんだけど、これも人間関係のいざこざの話だった」
まさか何か返ってくると思っていなかった翼は悠が話し始めたことに驚き、思わず顔を上げる。
悠は持っていた本を片手でパラパラと捲りながらゆっくり話し始めた。
「こういうの、ヒューマンラブストーリーっていうのかな。好きとか嫌いとか、その気持ちを向けている人も、その度合いも皆バラバラで、いつもは能天気で明るい人なのに、好きな人の前だと途端に不器用になったりしてる。”好き”って単純な言葉のようで、すごく複雑なんだなって思った。それで…暫く読んでて分かったんだけど、人間関係が上手くいってない時は多分、お互いが思ってる”好き”の度合いが、釣り合って無いからなんだって」
「”好き”の度合い…」
「そう。どちらか一方が相手のことを好きすぎるとか、好きの種類が違うとかそういう理由で、相手と関わっていくうちに自分がその人に向けている感情がなんなのか分からなくなる。その相違が起こると、相手の気持ちに応えられなくて些細なことが気になっちゃったり、その人の気持ちも考えず自分の願望の為に動いちゃったりする。友達関係もそうだけど、恋は特に、盲目になりやすいっていうからね」
まさに、要と翼の現状そのものだった。
要の好きは恋情、翼の好きは双子の兄にむける自然な感情。
ずっと同じ”好き”だと思っていた翼は、要に裏切られたような気持ちにもなった。
今までずっと要がそういう想いを馳せていたということを知って翼は混乱し、どうしたらいいのか分からなくなってしまった。
「はは…、なんだ。じゃあ最初からすれ違ってたんじゃん、俺達…」
「……」
乾いた笑いを零しながら呆れたように呟いた翼が一体何を思ってそう言ったのかは悠には分からなかった。
額と目元を手のひらで覆う翼を暫く見つめてから、悠は手元の本に視線を戻す。
それ以上、悠が踏み込む必要は無いと思ったからだ。
すると突然椅子から勢い良く立ち上がった翼が悠の手首を掴んだ。
「っ…」
翼は下を向いて悠の顔を見ないまま口を開く。
「…ねぇハーくん、」
驚いて瞬きを繰り返す悠の前でパッと顔を上げた翼は、いつも通りの悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
「今から、デートしよ?」
「………は?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
37 / 257