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ーーそれから七年後。
「ハーくん〜まだー?」
「まって兄さ…、う、わぁ…!?」
「ちょっハーくん!?」
階段を降りようとして見事に足を滑らせた悠の身体を翼は慌てて抱き留めた。
「あっ、ぶねぇ〜…やめてよハーくん。こんな大事な日に大怪我して病院送りとかぜんっぜん笑えないからね?」
「ご、ごめんなさい…ちょっと寝不足で…」
「えー?ダメだよー夜更かしは。また熱出したらどうすんの…って、あっ…もしかして〜昨日はお盛んだったカンジ?」
口元に手を当ててニヤリといやらしく笑いながら悠の顔を覗き込んでくる翼を見て悠の顔は真っ赤に染まる。
「ち…っ違うから!そういうのじゃなくて…っ」
「あっははは!じょーだんだよじょーだん。ハーくんは相変わらずウブだねぇ」
ジタバタと翼の腕の中で暴れながら悠は生理的な涙を浮かべた。
「っ〜〜兄さんの馬鹿…っ」
「おーい、翼ー悠ー、まだかー?」
二人が玄関前で騒いでいると外で車を出し終えた清治の声が聞こえてきた。
「ごめーん、今行くよ」
翼はそう返事をして不貞腐れる悠を下ろすとその目の前に優しく手を差し伸べた。
「ほら悠、行こう」
「…ん」
悠はそんな翼に呆れたような溜息をつきつつも幸せそうにその手を取る。
車に乗り込んでシートベルトをしめた翼は後部座席に座っている悠に向かって口を開いた。
「でも、緊張するのも無理はないよね、ハーくんは要と会うの七年ぶりだし」
「ほんとだよ、七年前はまだ高校生だったし」
「若かったなぁ、そんな悠がもう二十四歳だもんねー。最近どうですか?とっても人気な保健の千歳センセー」
「…からかわないでください、生徒人気ナンバーワンキープしてる理科教員の千歳先生」
悠は呆れたように首を振りながら深い溜息をついた。
すると運転席に座ってハンドルを切った清治は愉快そうに低く艶のある声で笑う。
「いやでも、まさか二人とも高校教師になるとは思わなかったよ。翼が教員資格とるって言った途端、じゃあ俺も先生になるとか悠が言い出すから」
「…別に、他に興味持てる仕事とかなかったから…」
「それで学校まで俺についてきちゃったんだもんね〜?可愛いなぁハーくんは」
「それはたまたまだから」
悠は照れを隠すように頬杖をついて窓に目を向けた。
清治の言う通り、最初に教師になりたいと言い出したのは翼の方だった。
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