アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
13.
-
アンティーク調の広い喫茶店の階段を登り、屋上に出ると雲一つない空の下、端の席で長い足を組みながら本を読む男が目に入る。
まるで雑誌の中から飛び出してきたのかと思うほどの妖艶さを纏う美貌と、シンプルでありつつも滲み出るお洒落感にとても見覚えがあった。
男はこちらに気付くとサングラスを取り、本を机に置いて立ち上がった。
「久しぶり」
以前と変わらないクールでハッキリとした低音に悠は擽ったさを感じながら翼から手を離す。
そして二人は互いに歩み寄り真正面から向き合った。
自分よりかなり上にある顔を見上げると要は穏やかに笑って悠の髪に触れる。
大きな手で頭を撫でられるこの感覚はとても懐かしいものだった。
「ずっと会いたかった」
「…うん、俺も」
再び視線が交じり合うと、要は悠に手を伸ばしそっと抱き締めていた。
「ーーただいま、悠」
七年越しの約束が、漸く果たせる時だった。
悠はそっとその背中に手を回して幸せそうに笑う。
「おかえりなさいーー要”お兄ちゃん”」
二人の目から溢れた涙は優しい風に運ばれて、淡く、儚く、どこか遠くへ消えていく。
四人の間を吹き抜けた暖かい春の風は、あの日の風の香りとよく似た甘い香りがした。
❦ℯꫛᎴ❧
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
61 / 257