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「……、」
メイアは目を開ける。
昨晩のウイルス感染の実験で高熱を出した身体は重く鈍っていて、熱に浮かされる感覚がまだ残っていた。
「…、は……、さむ…」
メイアは台の上で薄手のブランケットを手繰り寄せて折り畳むようにした自分の身を包み込む。
身体の芯は確かに熱を持っているはずなのに冬の冷たい金属製の実験台に一晩中触れていた身体は酷く冷え切っていた。
ーーセレンが来てから数ヶ月、メイアとは比べ物にならない程の完成度を誇るセレンが作られたことによってミギナの実験はより繊細で緻密なものに変わっていった。
セレンは、作られたのと同時期に亡くなったミギナの知り合いの学者の記憶と”セレン”という個体の記憶を別に持っている。
ミギナは他者の記憶を引き継がせることが可能だということをセレンという存在によって証明したのだ。
それによって記憶の共有化に固執していたミギナは更なる人間らしさを追求する為の研究を始めた。
その一つが昨日の病原体への耐性や感染率の実験だった。
体内に敢えて毒を入れるような行為に流石のメイアも注射器を見た時は恐怖に慄いたが、その針が肌に穴を開けた時にはもうそんな感情は完全に消え去っていた。
然し幾ら作られた人形でもウイルス感染によるその苦痛は人間と同等である。
勿論、研究の為のこの行為に慈悲の心など無い。
看病どころかその経過が逐一データ化されるのを朦朧とした意識の中ただ見ているのだ。
メイアは次第に食事も取らなくなり、常に実験台の上で死んだように眠るだけになってしまっていた。
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