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54 《一時》
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《一時》
それきり返事をしなくなった那月に慌てて、家に帰る。
「那月、俺の家だ。
待ってろ。すぐ暖かくしてやる。」
取り敢えずソファに下ろして、毛布を掛ける。
那月はグッタリしてる。
暖房を最強にすると、たちまち部屋が暖かくなる。
「……守谷さん……?」
「熱、測れ。
その前にコート脱いでな?」
「…はい。」
起きようとするが起き上がれない。
「……あれ?」
ダメか。
「ん、手伝うよ。」
コートを脱がして、体温計を挟ませる。
「あ……」
コートを片付けようとしたら、哀しそうな目でじっと見てる。
「なんだ?」
「……あの…コートのポケット……」
ポケットを探ると、小さなクマのぬいぐるみ。
どっかで見たような……?
「…くまさん……。」
手渡すと、ギュッと胸に抱えた。
「……ありがと…ございます……。」
こんな時でも礼儀正しいのが哀しくなった。
熱は38度3分。
「医者行くか?
連れてってやるから。」
「大丈夫です。
あったかくなってだいぶ楽になって来ました。」
顔色も青ざめていたのが、ずいぶんマシになった。
うーーん……真夜中だしな。
解熱剤入れて様子みる…か?
「薬のアレルギーとか無いんだな?」
「はい。」
座らせて薬を飲ませて、カフェオレ作るのに買ってたミルクを入れてやる。
「…ありがとうございます。」
ふー、ふーっと
「温かいです……御馳走様でした。」
手渡された時に、手も暖かくなっていた。
「飲んだら、ベッドで眠れ。」
「そんな!もう良くなったから、帰ります!」
「どこへ?」
「…う……」
クマを握り締めて、俯いた。
「決まりだな。」
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