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するといつの間にこちら側へ来ていたのか、唐突に恵愛は背後から弥斗に抱き締められてビクリと身体を揺らす。
「ね〜ぇ〜!鈴ちゃんは、俺とユウちゃん、どっちがいい?」
どこか舌っ足らずな口調でそう言う弥斗だったが、そこには確かに恵愛を考慮した気遣いがあって、ちゃんと聞き取ることができた。
弥斗は酒の独特な匂いを纏わせていたものの、その香りに混じる慣れ親しんだ上品な香水の芳香が恵愛の鼻腔を通り抜けていき、それが酷く安心感を与えてくれる。
恵愛は甘えるように腕を回して身を寄せてくる弥斗に少しばかり擦り寄って、困ったように首を傾げた。
「そう言われても…僕には選べないよ」
「なんで?」
「二人とも、大好きだから」
至極当然、といった様子でサラリと爆弾を落とした恵愛に弥斗と悠治の顔が赤く染る。
「〜〜〜〜っ鈴ちゃぁぁん!俺も好き!大好きだよ〜っ」
ぎゅうぎゅう、と恵愛を強く抱き締める弥斗を見た悠治はハッと我に返り、慌てて机に身を乗り出した。
「おい弥斗!いい加減恵愛から離れろ」
「やぁーだねーっ。鈴ちゃんは俺のもんなのー。このかわいー子は今日は俺がお持ち帰りするんだもん」
「もん、じゃねぇーよ。お前がやってもキモイだけだわ」
「なんでよ可愛いでしょ!」
「普通にキモイわ。いっぺん鏡見てから言ってみろっての」
「はぁぁ?むっかつく…!だいたいユウちゃんはさぁ…!」
第何ラウンドか分からない言い争いが勃発しそうになった瞬間、ついに智早の堪忍袋の緒が切れる音がした。
「あーもういい加減にしろっつってんだろッ!」
バンッ、と勢いよく振り下ろされた智早の拳が、振動で卓上の皿や飲み物を大きく揺らす。
その場が一瞬にして凍りついた。
智早は細く息を吐き出しながら恵愛を抱き締めたままの弥斗に目を向ける。
「…弥斗」
「っえ、な、なんでしょうか…智早サン…」
「恵愛を離して、元の席に戻れ」
「え〜…でも…、」
「……弥斗?」
あまりの圧に鳥肌を立てた弥斗は降参とでもいうようにパッと手を挙げて恵愛から離れる。
「戻る、戻るから…!そんな人殺しそうな顔しないでリーダー!」
そう言いながら青褪めた顔をして元の席に戻ると、シュンと項垂れた弥斗の髪を悠治は呆れ顔のままクシャリと撫でた。
悠治は目線を其方に向けるでもなく、酒を片手に持ったまま不器用で、でもどこか優しい手つきで触れると弥斗は満更でもない顔をして微かに笑う。
この二人は喧嘩をしているのが平常運転ではあるものの、高校からの付き合いということもあってMental connectionのメンバー内でもダントツの信頼関係を築けている。
この二人がここまで素直に接することが出来るのはお互いのみなのだ。
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