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梅山さん⑧
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「莉紅様っ!!」
屋上へ上がると莉紅様が泣いていて、そんな莉紅様をアッキーが抱き締めていた。
酷い。大谷も篠田も許せない。
「大谷、悪気があったわけじゃないと思う」
「それは分かってるよ。なぁなんで僕、いつもいつもイジメられるんだろ? 僕なんかしたかな?」
昔からいつもイジメのターゲットにされてきたと聞いた。イジメから守る為に、葵唯君が身を粉にして守っていた事も。
いじめる人達の気持ちも分からないでもない。莉紅様はなんていうか、異質だ。大勢の中にいれば目立つし、目が合うと逸らせなくなる。
綺麗な顔付きは中性的で女性にも見える。白い綺麗な肌。儚げな瞳を見ると守りたくなるような、壊してしまいたくなるような気持ちになる。
男からしたら支配欲を擽られるのかもしれない。それなのに、ハッキリとした意思の強い目は支配を許さない。
もし莉紅様が先頭に立って皆をまとめる様な人ならイジメにはならないのかも。
でも、莉紅様って内弁慶だからなぁ。
篠田みたいな自分が一番でないと済まないタイプは、莉紅様を屈服させたくなってしまうのかも。
「そんな奴の為に莉紅様が心を痛める必要はないわ」
後からやってきた葵唯君も、私に同調した。
「夏希ちゃんの言う通りだよ。莉紅、もし今後またイジメに発展するようなら俺が必ず守る」
アッキーも頷いて同意見を述べた。
「俺も。百合川達もいるしさ、安心していいよ」
この時、確かに私達は更に一致団結していた。
それから莉紅様は大谷を避けてたし、大谷も近寄らなくなった。学内でエッチしてないから止める理由がなくなったのもあるけど。
でも、確かに愛人三人と莉紅様の関係は変わっていってて、私はミカリンやそのグループの子達と一緒にいる事が増えた。
「夏希ぃ、今日夏希の家遊びに行きたい!」
ミカリンはよく私の家に来るようになった。もちろん私もミカリンの家に行くけど。何故か私の部屋が気に入ったらしい。
「もーミカリンはぁ〜。私の部屋好きだね?」
「だって可愛いんだもん。オシャレ空間。いるだけで私もお嬢様みたい」
その部屋で山野辺にピアス付ける事になっているのは秘密だけどね。
莉紅様の家でペニスにピアスをつけた後、夏休み中旬くらいに私の部屋に上げたんだよね。
「お嬢様は言い過ぎぃ」
「いいでしょ?」
「いいよ〜」
莉紅様と付き合う前に戻ったみたい。葵唯君と最近エッチしてない……不満があるとしたらそれくらい。
放課後、ミカリンを連れて家に帰った。けど、家に入る前に後悔した。
電柱から顔半分出して、ビデオカメラを回しているアホがいた。
ゲッ、山野辺……!
どうして今日来るのよ!?
確か最後に来たのは夏休み中だった。乳首にニップルピアスしてやったっけ。
「ねぇ、なんか不審者いるよ? 警察呼ぶ?」
ミカリンが私の制服の袖を強く握って怖がった。スマホを持って今にでも通報しそうな雰囲気だ。
まずい……。
「いいよ、たまに出現するレアポケ〇ンみたいなものだから。気にしないで」
「もしかして知り合い?」
変質者と知り合いと思われたらミカリンはどう思うだろう。嫌われる? また一学期の時みたいに避けられてしまうかもしれない。
それは嫌。
「えっと、近所の人。無害だから大丈夫」
山野辺は放っておいて家に入った。彼に目で帰れと訴えたけど、分かったかな?
ボディピアスにハマってしまった原因を作ったのは私だ。後でフォローしないと……。
ミカリンに先に部屋に行くように促して、お菓子と紅茶の用意をした。莉紅様からもらった茶葉だ。私はこんなの買わないけど、お陰でミカリンの中で私はお嬢様のイメージが出来上がったなら嬉しいかも。
ま、お嬢様からは程遠いんだけどね。
「ミカリン、お待たせ〜」
「わぁ〜い。えへへ、ありがとう〜。ねぇあだ名で呼んでいい?」
「え? あだ名つけてくれるの?」
「違うよぉ。佐々木君がナッキーって呼んでたよ? もしかしてカレカノの呼び方?
夏希もアッキーって呼んでたよね」
「付き合ってないよ。アッキーは大事な友達なの。ミカリンもナッキーって呼んでいいよ」
アッキーとはエッチもフェラもキスもした事ないしね。同じ莉紅様の愛人だけど、私は友達だと思ってる。
「嬉しい」
ミカリンは顔を赤くして喜んでくれた。
こういう友達って今までいなかったから嬉しいな。中学の頃は、男ってバレたくなくて女子に近寄らないようにしてたし。
「ナッキーは小倉君が好きなんだもんね……」
「うん。ミカリンは好きな人いないの?」
「いるよ!」
「へぇ〜。誰か聞いてもいい?」
今までミカリンと恋愛話とかしなかったなぁ。女子同士でこういう話出来るのって結構嬉しい。
「うん。ナッキーだよ」
「へ?」
「私、ナッキーが好き」
思考停止。ミカリンが何を言っているのかよく分からなかった。
あぁ、友達としてだよね。ミカリンに恋愛はまだ早かったかな。
結構童顔で、小学生に見られてもおかしくないくらい可愛い顔してる。屈託のない笑顔を浮かべると妹が出来たみたいに思えるし。
中身が子供っぽくても違和感ない。
「男の子で好きな人はいないんだね?」
「ううん。好きなのはナッキーだよ?」
聞き間違い? いや、ハッキリと聞こえた。わ、私!?
「え……と。もしかしてレズとか?」
「ううん。ナッキーは男の子でしょ? 私は普通に男の子が好き。男の子の中でナッキーが一番好き」
「な、な……」
何故男だとバレているの!? 誰か話した!? 一瞬大谷の顔が頭に浮かんだ。莉紅様や葵唯君、アッキーは絶対言う筈ないし、百合川達もミカリンと接点はない。
大谷だって接点はないけど……でも、有り得るとしたら大谷しか考えられなかった。
「大谷に聞いたの!?」
「こ、怖い顔しないでよ。違うよ。篠田が言ってたんだよ、この前ナッキーが声が男っぽかった。アイツは絶対男だって……」
「し、篠田……」
頭が回らない。篠田が……アイツ……。しかも私が原因でバレるなんて。
「そ、それ、知ってるの、他にいる?」
「皆に言ってたよ。でも皆信じてないから大丈夫」
「なんでミカリンは私が男だって思ったの?」
ミカリンはバツが悪そうな顔で私を見つめた。
「前から、女の子とはちょっと違うって思ってたんだ。篠田の話聞いて、やっぱりそうかって思った」
「そう……」
つまりそれは私が普通の女の子に見えないわけで。
私は可愛い女の子、私は可愛い女の子、私は可愛い女の子……女の子だもん!!
「ごめんなさい。そんなに動揺するなんて思わなかったの。何か理由があって女装しているの?」
ミカリンを信じていた。その気持ちに変わりはない。裏切られたわけでもないし、嫌われたわけでもない。
ただ女の子に見られていなかった事がショックなだけ。そして、ミカリンを受け入れる事は出来ないという事が私の胸を痛める。
私がこんな人間じゃなく、普通に男として生きられたら、きっとミカリンと付き合っていたんだろうか。
「私は……身体は男だけど、心は女なの。私は女の子なの! 可愛い! 可愛い女の子なの!」
「ごっごめんなさいっ」
ミカリンはハッとした顔をして頭を下げた。下を向いたまま頭を上げない。
「隠してたっていうのもあるけど、私の事を男だっていう目で見られたくなかった。私は女なの、ミカリンを好きにはなれない」
「軽く考えてた。本当にごめん」
「私こそ隠していてごめんなさい」
「ナッキー! 私、友達のままでいたいよ。ダメ?」
ようやく顔を上げたミカリンは大きい目がらボロボロと涙を零していて。あぁ、本当の女の子は泣き顔すら可愛いんだ、って思った。
ミカリンが羨ましい。そんな相手は恋愛対象にはならない。でも友達でいるなら……。
「勿論いいよ」
「この事は絶対言わないから。私が告白した事も言わないでね。私とナッキーの秘密だよ!」
「うん。ありがとう、ミカリン」
ミカリンが右手の小指を立てて私の前に差し出してきた。私も彼女と同じように右手の小指を立てて、絡ませた。
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