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小倉君⑦
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夏希の身体を貪った後、俺と夏希は家へと帰った。恋人繋ぎで手を握って、改札口を出る時以外はずっと離さずに繋いだままだった。
家に帰ると、莉紅と和秋が玄関まで出迎えてくれた。
「おかえり、どうだった?」
二人ともニヤニヤした顔を向けてきて、なんか気持ち悪い。
「俺達、付き合う事にした」
「ようやくだね」
莉紅がうんうんと頷きながらそう言うと、夏希が少し困った顔をしながら答えた。
「本当ようやくね。でもね、葵唯ってばなんか変なの」
「変?」
どこが変なのか聞いてるのに、夏希は少し笑った。
「変だよ〜」
俺のどこが変なのか分からないけど、幸せそうに笑ってる夏希もなんか変だよ。
そんな笑顔、今まで見た事なかったもん。俺が変なのそんなに面白い?
「手ぇいつまで繋いでるんだよ? 紅茶飲むでしょ、ほら」
「俺と夏希の邪魔しないで」
莉紅が意地悪な事を言い出したから、ムッとした反応をしてしまった。
「あ、あのさ葵唯。私もそろそろ離して欲しいかも」
けど、夏希にまでそう言われてしまった。
離したくないよ。
夏希が嫌がるなら無理は出来ない。仕方なく手を離す事にした。
和秋は笑いを堪えるように手で口を押さえている。皆だって変じゃん。
四人でティータイムを過ごすと、もう愛人関係じゃないのに、そうだった時とあまり変わらない。
このまま皆と仲良いままでいられたらいいな。
翌日の事だ。
密かに大谷に呼び出された俺は、放課後夏希に先に莉紅の家に行くように言って、屋上へと出た。
「用ってなんだ?」
大谷は暗い顔をしていて、それが莉紅のせいだと分かる。
「あのさ、永瀬君と話し合いの場を設けてもらえないだろうか?
話したいって何度言っても断られる一方なんだ」
「何を話すんだ?」
「謝りたい。許してもらいたいんだ。それで、告白がしたい。俺は永瀬君の事が好きなんだ」
憐れだ。莉紅が大谷と話せば済む話なのに、莉紅は大谷を許していないから無視している。
大谷への恋心が残っているのかは不明な状態だ。
それに今莉紅には和秋がいる。例え未練があったとしても、それを表面上に出す事は絶対にないだろうな。和秋の為に。
「莉紅と和秋の事は知ってる?」
「ああ。佐々木から聞いた。俺にごめんって謝ってきて」
和秋は真面目だから。
どちらかというと、莉紅と大谷を応援していたのは和秋だ。夏希はどう思っていたか知らないけど、俺はそこまで興味がなかった。
ただ莉紅が俺を捨てるんじゃないかって、それが嫌で反対していただけだ。
「それなら分かるだろ。莉紅は和秋を選んだんだ。最初に莉紅に告白された時に逃げなければ良かったのに」
「あれは後悔してる。後悔してるんだ! 永瀬君と付き合えなくてもいい。せめて話だけでも……」
「いいよ」
必死な顔。話くらいしてやればいいよ。
また莉紅に怒られるかな。でも、莉紅は愛人じゃない俺にお仕置き出来ない。
それはもう要らない。何があっても切れない絆があるって、思い出したから。
だって、大谷可哀想じゃん? 同情からでも、そうでなくても、やる事は同じだ。
俺は大谷に笑顔を向けた。
教室に戻ると、夏希が俺を待っていた。
「あれ、先に莉紅のところ行ってていいのに」
「だって一緒に帰りたかったし」
夏希と手を繋いで歩く。学校でこんなイチャイチャして、なんか変な気分だ。
今まではエッチな事をたくさんしてきたのに、手を繋ぐだけの行為が幸せな事だと思える。
「大谷と何話したの?」
「あー。夏希、ちょっと俺を手伝って欲しいんだけど」
「どんな事?」
俺は大谷と話した内容を夏希に話した。
夏希はうんうんと頷きながら聞いてくれて、自分の考えも言ってくれた。
「……ってわけで、大谷と莉紅が話せるようにしたいんだ」
「それなら偶然を装った方がいいかもね。私も何度か莉紅君に大谷の話題振った事あるんだけど、その話しないでって言われちゃってさ」
「そこまで怒ってるって事だよなぁ」
「多分、二人が話す席を作っても、莉紅君が認めないよね。頑固だし」
「確かにね」
「でもどうやって話し合いの席を作るかなぁ」
「そうだ! こういうのはどう?」
夏希は自信満々に提案をしてきた。
莉紅の影響でしかないんだろうが、夏希はする事に躊躇がない。
俺でもドン引きする提案をしてくるけど、今回のそれならまだ許されるかな。
「いいんじゃないか? これから細かい計画練れば」
「うん、明日計画実行だね! 今から大谷に言いに行こうか」
来た道を引き返して、何故か微妙な顔付きになっている大谷に莉紅との面会場所と方法を話した。
大谷はずっと俺と夏希の繋いでいる手を見ていた気がする。
なんだ? 手ぇ繋いでるのそんなに気になる?
「こういう計画なんだけど、どう?」
夏希が聞くと、大谷は頷いた。
「二人に迷惑かけてごめんな」
「いいのよ、頑固な莉紅君が悪いんだから」
「あの……梅山さん、永瀬君の事莉紅様って呼ばなくなったんだね」
「もう愛人関係は全員解消したんだよ。だから、もう莉紅君はご主人様じゃないの」
「今は小倉君と付き合ってるの?」
「うんっ」
夏希は俺の腕に、寄りかかるようにぴったりと身体をくっつけてみせた。それだけで胸がドキッとなる。
「そうなんだ。小倉君、梅山さん、良かったね」
どういう意味の良かったなのか分からなくて一応頷いておいた。大谷は嫌味とか言うタイプじゃないし、普通に祝福してくれているんだろうか。
「俺さ、永瀬君と付き合うのに一番障害になるのは小倉君だと思ってたよ」
「だから和秋に相談とかしてたの?」
「分からないけど、そうかも」
無意識に判断していたんだろう。
俺の方が莉紅と一番繋がりが深くて、和秋はまだ愛人になりたてだし、大谷を応援していたから、味方になってくれるだろうと。
心のどこかでそう感じたというところか。
「俺と莉紅はようやく親友になれたってところかな。今までは傷の舐め合いをしてたようなもんだったから」
「最初から小倉君に相談していれば良かったなぁ」
「そればかりは……」
「分かってる。過ぎた話だ。佐々木君が悪いわけじゃないのも分かってる。永瀬君が君達や佐々木君を特別大事にしてたのも知ってるから」
「大事に……ねぇ」
傍から見るとそう見えるって事か?
学校じゃセックスばかりだった気もする。莉紅が俺らを大事にしていたのは否定しないけど、大谷が見て分かるような態度は取っていなかった筈なのに。
「だって永瀬君は佐々木君に、お母さんにきちんと挨拶しに行って、愛人関係も全て話すって言ってた。
二人だって愛人にそこまでする永瀬君に驚いただろ?
俺も、我儘言わずに愛人で良かったのかもしれない……」
暗い顔になってしまった大谷はそれだけ言うと、回れ右をして教室に戻っていった。
「ねぇ……葵唯。親に挨拶って、普通する?
正式に付き合ってるわけでもないのに。今までの愛人の親に挨拶しに行った事あるの?」
夏希が驚いた顔のまま俺を見つめている。目が合った嬉しさより、今の話の方に気を取られる。
「聞いた事ないけど、俺が知る限りそんな事までしない。俺のお母さんに挨拶しに行ってないよ」
「葵唯のお母さんって今は?」
「実家にいるよ。病気で療養してるんだ」
「そっか。私は葵唯のご家族に挨拶に行く覚悟は出来てるから」
「夏希!」
我慢出来なくなって夏希を抱き締めた。優しく背中に回される腕。愛しくなる。
今日はヤリ部屋じゃなくて、自分の部屋で彼女を抱きたいと思った。
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