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永瀬君④
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すぐに放置されていたスクールバッグからスマホを取り出して葵唯に電話をした。
「葵唯……助けて」
「どこ? 帰り遅いって皆心配してるよ」
「出来れば両親に知られたくない。友達の家にいるって伝えて。葵唯は僕の下着と服を何か適当にと、タオルとビニール袋を近くの公園のトイレに持ってきてくれる?」
「何があったの?」
「とりあえず言う通りにしてよ。後で話すから」
上手く両親を誤魔化した葵唯が必要な物を持ってきてくれた。
トイレに着いた葵唯は顔を真っ青にして僕に駆け寄った。
「莉紅! 大丈夫!? なんでこんな事……」
「ヤられちゃったよ。ダセェでしょ」
「ダサくない。こんな事する奴のがダサいよ! 警察に……」
「やめて。僕だってプライドがあるんだ。襲われたなんてさ、本当は誰にも知られたくない」
葵唯が僕の汚れた服を袋にまとめて、身体の精液をタオルで拭いてくれた。着替えて何食わぬ顔で帰ると、お母さんに小言を言われたくらいで済んだ。
それから一ヶ月後。
バカ野郎が公園で待ち伏せしていて、僕が凌辱された写真を見せながら笑顔で近づいてきた。
「よぉ、久しぶりだな。またやろうぜ。好きだろ?」
「冗談は顔だけにしろよ」
「ふぅん、じゃあやっぱりネットにバラ撒こうかな。俺ら未成年だから捕まっても問題なしってな。ママに助けて〜って言ってみろよ」
ふざけた挑発。
こんなもんに引っかかるか。無視だ、無視。
「別に、やらないなんて言ってないし」
あれ、無視は?
「あれあれ? じゃあやんのか? 本当は好きなんだろ?」
「……っ、好きにしろ」
どうして抵抗出来ない? 胸がざわつく、あの快楽をまた求めてる。
葵唯とする時の高揚感とは違う。また種類の違う快楽を身体が欲していた。
呼ばれては回されて、高ぶった熱を葵唯にぶつけていた。それは良い相乗効果を生んで、葵唯はかなりレベルの高いドMに育っていった。
回された後はイライラしてドSになる。葵唯をいたぶるのも快感だった。
ただ、許せない事があった。
この僕が認めていない人間に自分の身体を触られる屈辱。ずっと、どう殺してやろうかと思ってた。
受験が近い事を口実に、僕は不良達とあまり関わらなくなった。奴らも別のターゲットを見つけたようで、僕は半分自由の身となった。
身体は疼く、だが愛人を作って輪姦プレイをするのは自分のプライドが許さない。
そんな時だった。進路希望表を提出する日。僕は紙を机に用意していた。第一志望は隣の県の私立高校で、第二第三志望は同じような偏差値の私立高校だ。
「莉紅! やっぱり俺と同じ高校にしろよ」
急に僕の席の前にやってきた葵唯が、事もあろうか僕の進路希望表を破り捨てた。
「葵唯!?」
「その進路でどうするの? 高校でいじめられたら誰が助けんだよ。その身体だって、どうするつもり?」
「君が僕を守ろうって?」
「そうだよ! 莉紅は俺の恩人だ。だからこれからは俺が守る。あと、その志望校は俺が入れないから、お前が俺に合わせろよ」
いやいやいやいや、なんだそれ。
あーあ、こんな奴愛人にするんじゃなかった。
僕の事恩人とか言ってさ、僕は君を緑の代わりにしてる。君だって同じだろう?
所詮は傷の舐め合いだ。どうして僕が君の言う事を聞かなくちゃならないんだよ。
どうして──。
「分かった。お前に合わせてやるよ。また先生に紙もらわなきゃじゃん」
……はぁ。思ってる事と逆の事を言ってる。
ここのところ、ずっと気持ちと行動が合ってない。なんだよこれ。
何かがおかしい。僕は輪姦なんかされたくないし、高校生になったら家を出たいんだ。なのに、どうして……。
「莉紅、ありがとう」
ぱぁっと葵唯が笑顔を見せた。
あぁ、この笑顔を見ただけで、選択は間違ってなかったって思えた。
葵唯が大事だ。大事な大事な愛人。
僕はもう葵唯を緑の代わりなんて思えなくなっていた。
身体と心が乖離していたのは、自分で自分を騙そうとしていたからだ。自分の気持ちを否定せずに受け入れたら楽になった。
だから葵唯に抱かせてくれって言われた時、拒絶しなかった。
抱かれるのも抱くのも好きなんだ、僕は。
「ごめん。抱かせてくれなんて。でも俺……どうしても緑を忘れられなくて。
もし緑が生きていても俺は緑とセックス出来なかった。妄想でもいいから、抱かせて欲しい」
「……いいよ。僕も君を緑だと思って抱かれるから」
僕を愛していない顔。愛人なのに、愛してないなんて笑える。葵唯にとって僕は緑の代わりだ。
それでもいいよ、僕は緑の代わりになってあげるよ。その方が君の心は少しでも楽になるんでしょう?
僕もその方が楽だよ。
それから葵唯以外の愛人探しは積極的になった。作っては別れてを繰り返していたから、人間不信になったけど。
朝は僕がネコで葵唯がタチ。夜は僕がご主人様で葵唯が奴隷。受験勉強の傍らそんなプレイをしていたけれど、僕と葵唯は近くの公立高校に受かった。
※
「そんな不純な関係だったんだね」
ほーっと、和秋が納得したような顔で頷いた。
和秋と恋人になって、葵唯と喧嘩した翌日。朝ご飯を作りながら僕の過去話をした。
和秋が僕と葵唯の関係を知りたがったからだ。
愛人にする時に、和秋には僕の素の一部を見せてしまったから、なんでも話せてしまう。
自分を出せる相手は葵唯以外に初めてだった。
だから和秋だけは前から特別だったんだ。
こんな僕でも受け入れて、愛してくれる人。
「愛人だけど愛してなかった。
僕は葵唯と友達になりたかった。でも葵唯は僕を緑の代わりにしたんだよ。だから腹いせに葵唯も緑の代わりに扱ってやったってわけ。
僕の命令を聞いて、なんでも言う事を聞く奴隷になった葵唯は可愛かったけど」
「悲しかった?」
「そんなとこ」
「仲直りしたら友達に戻れるよ。もう愛人じゃないんだし。じゃあ何になるかって言ったら友達しかないだろ」
「僕を置いて出て行って、本当に他人になるかも」
「大丈夫。俺もナッキーもいるじゃん。俺らがそうさせないよ」
和秋の声は安心する。
初めて絡んだ時は、不良っぽい姿の癖に気は弱いし、童貞だし、頼りにならないし。
僕の愛人になりたいとか言い出して、嘘だろ、お前が僕のプレイに付いて来れるわけないって思ってた。
でも実際付き合ってみると、親を除いて一番僕を愛してくれてる人だって事が分かった。
隠れドMだったところもポイント高い。
プレイの為に僕に刃向かってくれて、すんなりお仕置きプレイにシフト出来る。
可愛くて可愛くて仕方がなくなったのはいつからだろう。
今は男らしくなったね。
僕の事を優先に考えてくれるところも、お母さん思いなところも、夢に向かって頑張っているところも、尊敬するし、好きだよ。
大谷は緑と出会った時のような初恋みたいな感情があったけど。
大谷の愛より、和秋の愛の方が欲しくなった。
君といると時間が穏やかに流れていく。それなのに退屈とは思わなくて、もっと君と一緒にいたくなる。
最初愛人にしてくれと言う君を拒んだ事を後悔してる。僕には君だけが必要だったのに。
「和秋」
振り向いた和秋の唇にキスをした。柔らかくて、幸せになれるキスだ。
和秋は自分の唇を指で触って、頬を赤くさせた。
「莉紅っ! いきなりは心臓に悪いって」
「心臓、止めてやろうか?」
「やだよっ」
「死んだら後追ってやるよ」
「もう! そういう事言ったら怒るよ!」
一度も怒った事ない癖にね。可愛いなぁ。
「莉紅君、アッキー。イチャついてるところ悪いけど、お願い聞いてくれる?」
急に夏希が僕と和秋のラブラブを邪魔してきた。
感情を外に出さないように聞いてあげる。夏希は女の子だからね、少しくらいの我儘は聞いてあげるよ。
彼女の身体が男だって事はあの日、葵唯が輪姦の最中に化学室に連れてくるまで知らなかった。
ただ、女性にしては浮かべる感情が違うような気がしていた。
誰と話している時も、女の子のような態度ではあったけど、分厚い壁のようなものを感じたのだ。
生きるの辛そうだから、僕の愛人に加えて性癖を解放してやれば、もっと楽になれるんじゃないかと思っていた。
だから、彼女が葵唯に恋をしていると知って、僕達の事情に巻き込んだ。葵唯の鎖を壊してくれるとも期待した。
期待した以上の結果だ。
「いいよ、お願いって?」
「これから葵唯君を起こすから、葵唯君が謝ってきたら許してあげて欲しいの」
「許すも何も。怒ってないけど」
「それでも! 謝って許すって流れが必要でしょ。葵唯君はずっと莉紅君に酷い事言ったって後悔してたから、ねっ」
「いいよ。和秋と朝アニメでも見てるからさ」
今度こそ、僕は葵唯と友達になれるんだろうか。
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