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永瀬君⑦
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好きだと思ったのはいつからだろう。
最初に縛られてレイプされた時は、僕が好きすぎて辛いって顔してる和秋見て、「ここまでしちゃうくらい僕の事好きなんだ」って思った。
今までの愛人に不快な事されて、この度に別れてきたけど、和秋は何かが違った。
あんなに大人しくて、百合川達に合わせて不良ぶろうとしているのに、それも出来なくて頼りなさそうに見えていた和秋が、僕を騙して監禁陵辱をした。
確かにあの時、何か企んでるな〜とは思っていたけど、そんな事されるなんて思ってもみなかった。
よくストーカーに好かれた人がその相手に恐怖する事があるだろう。多分僕もストーカー被害者と同じ状態だったんだと思う。
けど、不快感がなかった。
仕方なく愛人にしてあげた。
最初は一ヶ月だけ。相性が合わなければ愛人関係は解消するという約束した。どうして試用期間を設けたのか。
和秋がどんな人なのか、知りたくなったからだ。
思った事は「和秋は僕の事ばっかだ」って事。
わざと僕に反抗してみせて、お仕置きと称してSMプレイをする。最初は和秋がそういうプレイをして欲しいからだと思って乗ってあげてた。
でも、ある日それが違うと知った。
夏休みに入る直前だった。
帰り道、珍しく和秋が僕に反抗せずに一緒に帰ろうと言ってきた。その日は葵唯は補講で、夏希は部活で帰りが遅い日だから僕と和秋の二人で並んで帰った。
僕は珍しいな、気分じゃないのかな? と思って和秋に聞いた。
「今日はSMプレイじゃなくて良いの?」
「うん。莉紅はSMプレイしたかった?」
「僕はセックスが出来ればいいの。どんなプレイでもしてみせるし、ヤる相手を喜ばしたいっていうのかな、和秋が楽しそうならそれでいいんだよ」
「えっ……SMって莉紅の趣味じゃ?」
「違うよ。お仕置きプレイすると和秋が喜ぶから」
和秋は赤い顔して目をキョロキョロさせた。しどろもどろになってるのなんかイライラした。
「俺は、莉紅が喜ぶと思って反抗してたんだ。
なんだ違ったんだね」
「でも君ドMでしょ?」
「否定はしないよ、お仕置きされるの好きだし。でも何より、莉紅の好きなプレイだからしようと思ってたんだ」
「じゃあ今日は?」
「莉紅がなんか疲れてるなぁと思って」
ムカムカしてきた。和秋が喜ぶと思って頑張って鞭の練習もしてたっていうのに。
和秋は僕がSM好きだと思って、僕にお仕置きプレイをさせてあげてたって事?
いや、和秋も喜んでいたのは確かだ。嫌々だったら僕ならすぐ分かるんだから。
「僕の事考えて、僕に合わせてたの? 君は? 君の意思はどうだったの?」
「俺は莉紅になら何されても嬉しいんだ」
ドクッと。胸が大きく揺れた。
君は僕が好きで、僕に何されても喜んで、僕の為ならなんでもしてくれるんだ?
「そんな事言われると、調子乗っちゃいそうなんだけど」
「莉紅は俺に好かれるの嬉しいんだね」
嬉しい?
心を見透かされた気がした。
その時は気付かないフリをして、愛人の一人なんだって言い聞かせた。いつも僕の為にお疲れ様、と思うだけにしようとしていた。
※
体育倉庫から出ると、和秋が僕をお姫様抱っこしたまま教室へと向かった。階段を登り、廊下を歩いている。
人一人を両腕だけで支えているんだ、和秋の息遣いは少し荒い。けど、僕は降ろしてと言わなかった。
無言になったのは和秋に抱っこされてドキドキしているから、とかじゃない。
後ろから僕にうるさく話し掛けてきているのが二人いるから、和秋と喋れなかった。
ずっといたらしい。気付かなかった。
和秋の後ろを歩いてる人がいるから、誰だろうと思ったらこの二人だったんだ。
「莉紅、ごめんって。そんなに怒るとは思わなくて。言い訳になるけど、大谷が可哀想だと思ったんだよ」
と、葵唯。知ってる、僕への謝罪で心穏やかじゃない事ももちろん分かっているさ。
「大谷の言いたい事聞いてあげるくらいいいでしょって思ったのよ。莉紅君を裏切ったとかそういうわけじゃないから」
次は夏希。分かってる、けどなんかモヤモヤしてるんだよね。
「……はぁ、僕が大谷君を無視していたのは、許すつもりがなかったからだよ。それなのに君達は僕が大谷君を許す機会を与えた。
それ、友達がする事かなぁ?」
二人は沈黙してしまった。
行ってないから知らないだろうけど、こうして僕が会話を続けたって事は許す余地があるって事。
もうそこまで怒ってないよ。これで大谷とも決着ついたしね。
「俺は大谷と仲直りする方が良いって思った。学校生活、あと二年半あるだろ、それまでに何回大谷と関わる事があるか分からないのに、拗れたままだと莉紅の為にならないと思った。
友達だと思ったからした事だよ!」
「そうよ。私も葵唯と同じ気持ちだからね!」
「分かったよ。もう怒ってない、後で仲直りエッチでもする?」
「ごめん。友達だからエッチはもうしない」
「私も。葵唯以外としたくなくなっちゃったから」
二人とも冷たい。
「和秋ぃ、二人がもうエッチしないって。やっぱ僕には和秋しかいないよ」
「あはは。莉紅は寂しがり屋だなぁ」
「そうだよ。だからずっと傍にいてね。係の仕事やる時も絶対離れないでね」
「怖い思いしたね」
「そこまで怖くなかったけど」
「え、でも莉紅は暗いところ苦手だよね?」
何故それを知っている!? 弱点あるの隠してるのに!!
「えっ、莉紅暗いの怖いの!?」
「なんだか意外。可愛いところあるのね」
後ろの外野がわいわい騒ぎだした。僕が暗いの苦手なのが、そんなに楽しいの?
可愛くないし。
「なんで分かったの?」
「寝言で言ってたよ。俺の服ぎゅっと掴んで、暗いの怖いから抱き締めてって」
「なにそれ、知らないよ!?」
「言ってないからね。ぎゅーって抱き締めてあげたの覚えてないのは悲しいなぁ」
「しかも、葵唯と夏希に聞こえるように言ってるし! 後でお仕置きなんだけど!」
って言っても、和秋にお仕置きしても喜ぶだけだからお仕置にはならないんだよね。
「ご褒美でもいいよ」
「えっ、ご褒美?」
ご褒美は、中途半端に責めてからの放置プレイだから、和秋にとってご褒美でもなんでもない筈。
いつも嫌がるのに。
「うん。俺が莉紅にご褒美あげるよ。大谷と仲直りして偉いねって。好きなプレイなんでも言って、今日は莉紅の望み通りにイカせてあげる」
汗が滲んできてる。やばい、熱くなってるのバレる! 僕が和秋にドキドキしてるって知られちゃう。
「やだ、和秋、おろして」
「だーめ。怖い思いしたんだから、教室までは休んでていいよ。莉紅は軽いからね」
「ダメだって。和秋の腕折れるよ!」
「可愛いなぁ。恥ずかしくなっちゃったかな」
「そんなんじゃない!」
「あれ? 素直じゃない子はお仕置きかな〜」
「僕だって和秋になら何されても良いと思ってるからね」
僕が笑顔を向けると、楽しそうに笑みを浮かべた和秋の感情が読み取れた。安堵だ。
大谷に取られると思って不安になってたけど、そうでなかったから安心したって普通思うんだろうけど、和秋の場合は違うんだ。
僕が暗いの怖がってないか心配してたけど、大丈夫そうで良かった、って思ってるんでしょ。
「和秋は、僕が大谷に取られるとか思わなかった?」
「そういえばその心配もしないといけなかったね。莉紅が怖い思いしてるんじゃないかって、気が気じゃなかったよ」
「和秋らしいね」
どこまでも僕の事ばっかだから、次の君の誕生日は一日中、僕が君の事ばかりになってあげよう。
「いつも俺らの事バカップルとか言うけどさ、二人も凄いバカップルになってるじゃん」
「本当だね、あははは」
夏希が笑うと釣られて葵唯と和秋も笑った。
僕から見える皆の顔は幸せに満ちている、きっと僕も幸せそうな顔してるんだろうね。
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