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セントポーリア
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私には夫がいる。
夫と言ってもこの国では同性同士の結婚は許されてないから私たちが勝手に思ってるだけ。
そんな夫は仕事人間だ。
企業向けに医療器具を販売する会社の社長をしている夫は忙しいみたいだ。
家でもパソコンを開いて仕事をしている。
2人の休みが合った日でも、記念日でもパソコンとにらめっこ。
1度だけ「貴方の中で優先順位は仕事なの?」と聞いたことがある。
あの人はただ一言、「そうだな。」と答えた。
パソコンから目を逸らすこともなく放たれた言葉に冷たさを感じその夜はベットの中で1人泣いた。
この先ずっとこんな思いをするぐらいなら別れようと思った。
しかし、次の日の朝、目が覚めると土のかおりが部屋中に漂っていた。
匂いの本を探すと枕元に鉢が置かれていた。
青紫ですみれのような小さい花は花びらの縁が白で縁どられていた。
8枚の花弁が重なっていて可愛らしかった。
どうしてこんな所に花が置かれているのだろう。
この花はなんて名前の花なのだろう。
なんのためにこの花をここに置いたのか気になったけれど、それ以上にこの可憐で愛らしい花の名前を知りたくなった。
書庫から花図鑑を引っ張り出して調べた。
親しまれている花なのかすぐに見つけることができた。
セントポーリア。
すぐにあの人が私の為に置いたのだと思った。
仕事ばかりのあの人が花言葉を調べてこんな小さな花を買ってきてくれたと考えると愛おしさが溢れて泣きたくなった。
その日から毎年、記念日と誕生日にその花の鉢植えが置かれていた。
色も形も毎回違うものが置かれていて毎回楽しみにしていた。
最近では増えすぎて温室を造った。
そして仕事も落ち着いてきたのか夫も一緒に温室の管理をしてくれるようになった。
今度の結婚記念日には私から花を送ることにした。
青紫で白で縁取られた小さな花を。
セントポーリア
小さな愛
花を出すつもりはなかったんですが出てきてしまいました。
本音を語ることなく気持ちを伝えられる花は素敵ですね。
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