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コンプレックス7
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僕がジルに侍女に伝えたことを言いに広間へと向かうと、エル兄様とリドア、アンジェさんも一緒にいた。
「あら、ハルディア様、おはようございます」
「あ、アンジェさんおはようございます」
「ハルディア様もこちらへ来るのでしたら言ってくださればよかったのに。今すぐ食事を…」
侍女に伝えようと立ち上がろうとしたアンジェさんをエル兄様が制止した。
「アン、ハルディアはもう食事を別邸で済ましている。君が動くことないよ」
「このグズに媚び売ったってなんもいい事ねぇよ。逆にエル兄様にとってこいつに構うのはマイナスなんじゃねぇの?」
「リドア」
「……ちっ」
リドアが嫌味たっぷりにアンジェさんにそう言うと、一際低い声で名前を呼び、いい加減にしろと言わんばかりに睨んだ。
するとジルが雰囲気を和ませるためにため息混じりにふざけた口調で空気を変えた。
「もう…朝からピリピリしないの。本当にこの兄弟は不器用っていうかなんていうか…ハル、ボクに用があって来たんだろ?」
「え、あ…さっきの、話なんだけど…侍女に伝えておいたから、部屋に持って行ってくれてると思うよ。それだけ伝えに来たんだ」
「そっか、ありがとうハル。結局ボクが今借りてる部屋で食事をするって言ってたから、もし時間があるなら様子を見てあげてくれるかな?路上での生活が多かったから怪我も多いだろうしさ」
「分かった」
ジルは僕に気を使ってくれたのか、自然にこの広間から早く出させてくれるように促してくれた。
ジルは昔から優しい人だ。
エル兄様やリドアに虐められているのを見かければすぐ助けてくれたし、よくどこか遠いところへのお出かけにも連れて行ってくれた。
ジルのおかげで僕は笑顔でいられることが多かったし、嫌な思い出だけじゃなくなった。
本当に感謝している。
ジルの部屋へと向かい、ノックして中に入る。
すると中にはジルの言う通り、先程の獣人が食事をとっていた。
「あ…えと、服は届き…ましたか?」
「さっき来た」
「あ、そうですか…し、食事はどうですか?口に合いますか?」
「あぁ」
「…………」
会話が続かないんだけど…!
僕も口下手だから話すの得意じゃないのに、獣人との会話ってどうすればいいんだよ…
「…あ、えと」
「ノワール」
「へ?」
「名前、オレの。ノワール・アグリ」
「ノワール…いい名前ですね」
「…お前は」
「あ、僕…俺はハルディア。ハルディア・アイン・バルド」
「……………」
「あ、あの…?」
「覚えとく。あと、敬語要らないから」
もしかして、この人も口下手なだけ…?
それとも元々口数が少ないのかな…
でも、悪い人じゃないって言うのは何となく伝わった。
「分かったよ、ノワール。短い間だけどよろしくね」
「あぁ」
にしてもこの部屋なんかいい匂いするな…
ジルの匂いじゃないし…
嗅いだことがある匂い。
それとこの心臓の高鳴り、これも知ってる。
つい最近も同じようなことが起こったことがある。
「…ハルディア、部屋の鍵を閉めろ」
「え、どうして…」
「いいから早く」
少し強めに言われ、急いで部屋の鍵を閉めた。
すると目の前がぐにゃりと回り、心臓が大きくドクンと大きな音を立てた。
息も上がり、変な汗が吹き出てきた。
これって…
「はつ、じょうき…」
嘘…今この状況で…?
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