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第1話
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僕が住む村は都会から離れた山奥にある。
都会に行くには一日数本しかないバスに二時間揺られ、山道を超える。
それから、片手では足りないほどの乗り換えをして、電車で七時間くらいかけなければならない。
そんな都会とはかけ離れた田舎にある村
この村には言い伝えというやつが残っていた。
特有の古びた縛り。
そんな言い伝えのひとつにこんなものがある。
『冬に愛された者は春を見ることが出来ない』
意味は、わからない。
村に一つだけある郷土資料館の資料によると
この村は冬を越すのが難しいとされる村だった。
冬に愛されてる、とかなんとか
今でこそなくなったけれど、ずっとずっと昔は冬を越すために山へのオソナエモノをしていたらしい。
村の決定で一人、冬になると山に捧げていたのだと言う。
幼かった僕にはそれの意味がわからなかった。
今でも、わかりたくないと思っている。
けれどそのせいか、この村では冬生まれの人間は毛嫌いされていた。
冬に生まれるこどもは滅多にいない。
「おい疫病神!さっさと帰れよ!」
「そーだそーだ!」
「……。」
現在は僕を除いて誰一人いなかった。
もう慣れた。
村に一つしかない学校では逃れることの方が難しい。
変わらない面々に今更何か言い返す気にもならない。
僕がこの村の要らないものとされるのも物心着いた頃からだから変わらない。
「おい、お前ら何だっせえことしてんだよ」
この声も、変わらない。
「波瑠!お前なんでいつもそいつの味方すんだよ」
「るっせーな、高校生にもなってクソだせえことすんな。散った散った」
「ちぇ、波瑠がそう言うなら……」
まさに鶴の一声
波瑠には誰も逆らわない。
逆らえない。
派手な素行に物言い。
そんな君が人を惹き付けるのは、その不器用な優しさ故か
それとも、生まれつき春を背負ったみたいな柔らかいホワイトピンクの髪色のせいか。
冬が毛嫌いされるこの村に訪れた春
それが波瑠だった。
「ゆき、お前も言い返せよ。言われっぱなしとかだせぇ」
「う、うん。ごめんね、波瑠」
「別に怒ってねーよ」
「……うん」
くるり、振り返って歩き出す波瑠の背を数歩後ろから追いかける。
僕に隣に並ぶ権利はない。
だって、波瑠は
僕のせいであと十日しか生きられないんだから
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