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はじまり
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理由その一。周囲の目。
世間が寛容になりつつあるとは言え、やはり好奇の目にさらされるのはまだ避けられないことだと思う。
その目を向けられてまで、オープンに生きていきたいのか、自分にはそこまでの強い意志はない。
その二。人間関係の変化。
現状、ありがたいことに気が置けない友人が数人おり、自分がゲイであることは隠しているがそれ以外の部分についてはありのままの自分を受け入れてくれていると感じている。
そんな友人のことは、もちろん信頼しており、今までも何度か自分の性についても打ち明けてしまおうか考えたこともあった。
しかし、打ち明けた結果受け入れられなかった場合のことを考えるとやはりデメリットのほうが大きいため思い留まっている。
そして、一番は両親だ。
自分はどこにでもいるサラリーマンの父親と専業主婦の母親との間に生まれたひとり息子だ。
父親は、寡黙で昔ながらの父親といった雰囲気で、とても考えが柔軟とは言い難く理解してもらうのはかなり難航することが目に見えている。
最悪の場合、親子の縁を切られるということも考えられる。
そして、母親はというと、おっとりと優しく、ひとり息子である拓也を溺愛しており、一見父親よりは理解がありそうではあるが、息子が29歳になったいま、結婚のけの字も見えていないというのに、溺愛する息子の孫を抱きたくてうずうずしており、帰省した際には口癖のように孫というワードが出てくる。
そんな母親が、突然、溺愛する息子が同性愛者で、孫の顔が拝めないかもしれないとなると、何を受け入れてどう理解すれば良いのかわからずパニックに陥ってしまう可能性が極めて高い。
自分自身はもちろんだが周囲の人たちを巻き込んでまでゲイだと公表したいとは思えない。
つまりは、それだけの度胸もないのだ。
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