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翌日になり、陸とオモチャを買いにきた。
亮雅さんはメガネ売り場に行っているから、2人で陸のオモチャを選んでいる。
「どやって、つかうのぉ?」
「これは組み立てる車らしいよ。ほら、ここに説明がついてるだろ」
「クルマはしる!」
「どうやら走るみたいだ。あ、これも面白そうじゃないか?」
陸は子ども人気の鉄棒やすべり台をほしがったが、さすがに今日は買えない。
誕生日プレゼントにでも買って帰ろうか。
「ゆしゃんにも買ってあげる」
「え?」
「陸しゃんね、きょうはブーちゃんつれてきたの。だから、ゆしゃんのほしいの買う」
肩にかけていたショルダーバッグからブタの貯金箱を出した陸を、店内ということも忘れて抱きしめそうになった。
亮雅さんからもらったお小遣いを熱心に貯めている。
それは単にブタの餌としてあげているだけでなく、亮雅さんから教わったらしい。
陸の賢さには脱帽するばかりだ。
「ありがとうな、でも……それは陸のために大切に使ったらいいよ」
「陸がしたいのっ、ゆしゃんにもプレゼント」
「……」
親子そろって男前すぎやしないか……?
この親子はどれだけ好きにさせれば気が済むのだろう。
そろそろ心臓がもたない。
「ありがとう。じゃあ、そうしてもらおうかな」
「えへへ〜、いっぱいプレゼントっ」
陸のつけている腕時計が目に入って、買ってもらうものを決めた。
たくさん貯金があるようだが、高価なものでなくても十分嬉しい。
「ゆしゃん、なにする〜?」
「よし、これにしよう」
選んだのは、猫の写真がプリントされたノートだ。
お値段は1冊500円。
「ねこしゃん!」
「そう、猫って可愛いよな。陸の腕時計も猫だから、俺とおそろいだ」
笑いかけると、陸はピョンピョンと跳ねて喜んだ。
以前からペアルックをしたがっていた陸にできるサプライズというわけだ。
「ゆしゃんとおそろいっ、やたぁ!」
「喜びすぎだぞー。はやくレジに行くよ、亮雅さんが待ってる」
「りょしゃんにも買う!」
「はは、亮雅さん喜ぶかもな?」
「うれしーの。おそろい」
こうして話している言葉を、陸は理解しているのかもしれない。
俺が思っている以上に成長は早い。
亮雅さんが言っていたように、この舌っ足らずなしゃべりは訓練でどうとでもなるそうだ。
だが、陸のあどけなさにはこれが最も合うのかもしれないとも思う。
「あぁ! りょしゃん、メガネっ」
メガネ屋に入るなりキャッキャと亮雅さんの元へ駆け寄る。
あいかわらず亮雅さんはメガネさえもよく似合う。
なんだかムカつく話だが。
「せんせみたい」
「ん? 陸の先生はメガネをかけてるのか」
「うんっ」
家で書いた自己紹介プリントに陸は担任の先生も書いていた。
優しげな先生でよかった。
「……亮雅さんは視力がいいのだと、勝手に思ってました」
「裸眼でもまったく見えねえわけじゃないからな。予防策みたいなもんだ」
「……」
かっこいい、な。
この容姿ならモデルでもおかしくない。
「ゆしゃん!」
「えっ、あ、なに?」
「おウチかえるっ」
陸に手を引かれ、先を歩いていく亮雅さんに気づいた。
ぼんやりしてしまっていたらしい。
途端に恥ずかしくなって陸の手をにぎり返す。
亮雅さんのズルさは天下一品だ。
「ぼんやりすんなよ」
「……ち、ちょっと考え事をしてただけです」
「いちいち照れんなって。可愛いな」
「うるさいですよ」
楽しそうに笑うから恥ずかしくなるんだ。
確信犯め。
「ゆしゃん、ちゃめ」
「え? ちゃめ?」
「ちゃめ! せんせ、いってた」
ああ……お茶目ってことか。
やっぱり陸は、ある程度いわれたことを理解しているみたいだ。
誠くんとはまるで違うけど、たぶん本人にとっては同じなのだろう。
「陸、その腕時計かっこいいな。少し大人になった証拠だ」
「とけい! ねこしゃんかわいいでそっ」
「大事にしろよ〜? 優斗がセンスいいもん買ってくるなんて奇跡だからな。痛って!」
「悪かったですね、センスひどくて」
「拗ねんなよ。ご愛嬌ってやつだろ? お前、俺が教えるまでプレゼントの選び方も最悪だったもんな」
「……そうでしたっけ」
「この1年でかなり成長したなぁ。以前のテンプレート寄せ集めましたってプレゼント選びは本当に笑った」
「っ……もういわないでください、その話は」
以前の失敗は吐きそうなほど恥ずかしいものばかりだ。
それを時々ネタにしてくるから余計に。
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