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亮雅さんとのキスは好きだ。
気持ちいいだけじゃない、怖さも辛さも全部受け止めてくれる。
「は、ん……はぁ……亮雅さんっ」
「セックスは怖いくせに、俺を見る目は男を平気で殺すからな……」
「え、?」
「善くしてやるから、力抜いてろ」
「ひぁッ」
股間をさすられてビクッと体が跳ねる。
反射的に亮雅さんの胸辺りを捕まえ、抵抗しようと身をよじった。
「だめっ……」
「優越感なんてどうでもよかったんだけどよ……優斗を狙ってるやつがごまんといるって知ると興奮すんだよな」
「な、んん、乳首は……っ」
「だいぶ感度よくなったな、ここも」
「は、ぁっ……ん」
指先で両の乳首をなでられると快感がひどかった。
意識が飛びそうになりソファをつかんで耐える。
布地にこすれて余計にきもちいい。
きもちよくなるなと言い聞かせるほど、快感は反抗的に増してきた。
「あぁん……や、だ、ふんぅ……」
「声抑えんなよ」
「ンンっ……」
首を大きく横にふる。
恥ずかしさと緊張で手のふるえが止まらない。
「なんで抑えんだよ。可愛いのに」
「ふぅ……んあ、怖……い」
「なにが怖いの」
「あっ…………感じてる、自分……やじゃ、ないですかっ……」
「……」
顔を隠してしまったせいで、亮雅さんの返答がないことに不安を覚える。
やっぱり気持ち悪い、こんな俺……
「ん、もう……しない、っから、離……はんぅっ」
怖くなって胸を押し返したのに、亮雅さんの腕につよく抱きしめられ口をふさがれた。
なにもかも溶けてなくなりそうだった。
熱くて心地よくて苦しい。
「……さっきのタバコで弱ってんだろう。怖いならゆっくりやるから」
「な、で……そんな優しく……するんですかっ」
「うわ、泣くなよ。どんだけ切羽詰まってんだ」
糸が切れたように涙があふれてくる。
優しさが苦しい。
痛くされるのも嫌なのに、優しくされるともっと辛くなる。
どうしてほしいんだろう、俺は。
「大事なもんは粗末に扱えねえだろ? 優斗が可愛くて仕方ないんだよ。それ以外、理由なんて思いつかねえ」
「俺、は……そんな綺麗じゃ、ないのに」
「綺麗だ。どれだけ優斗が否定しても俺は肯定する。お前は見た目だけじゃない、中身もとにかく綺麗なんだよ」
「いや、です。もっ……言わないで」
「耳をふさぐな、ちゃんと聞け。分からないなら何度でも教えてやる」
「っ」
痛いほど分かる。
苦しいほど伝わってくる。
俺を大切に思っている優しさが。
「…………」
「そんな可愛い目で見つめるなよ。照れるだろ」
「! 亮雅さんが、ちゃんと聞けって……いうから」
「ハァー。そういうの、可愛さの暴力っていうんだぞ」
ソファに倒れ込む亮雅さんに強く抱きしめられる。
以前愛用していた柔軟剤が香って心臓に悪い。
「離してください……っ」
「いーやーだ」
「冗談、じゃないです」
「絶対ムリ」
「〜っ」
匂いだけで酔いそうになり、腕を当てて隠した。
亮雅さんのペースに任せていたら死んでしまう……!
「おい、俺はまだ歳じゃねーぞ。そんな臭わねえだろ」
「違っ……そうじゃなくて」
「ははは、焦ってら」
「なんでそんなに楽しそうなんですか……」
「嫁が可愛くてな……ほんと、幸せだよ」
「んっ」
顔が熱い。首筋も指先も。
だがどうしてか亮雅さんの目は寂しげだった。
なにに対してなのかは分からない。
まっすぐ俺を見ているはずなのに、罪悪感がこもったような哀愁がある。
「亮雅さん……?」
「幸せ……だ。本当」
いよいよ顔が見えなくなった。
見せたくないのかもしれない。
亮雅さんは責任感がつよいせいで、いつも辛さを隠そうとする。
俺のことばかり気にかけて。
「無理、して言ってませんか」
「してないよ」
「だったらどうして、寂しそうな目するんですか……また、"大丈夫"ですか」
「なんだよ、それ」
「亮雅さんは俺に話してくれないじゃないですか。大事なことなのに、いつも」
俺も話をするから。
だから亮雅さんのことも教えてほしい。
ひとつふたつじゃなくて、数え切れないほどのわだかまりが亮雅さんにもあるはずで。
「…………離れないんだよ」
「え?」
「光樹さんに弥生に陸に。俺は結局、誰も幸せにできない。それなのに俺が幸せになっていいのかって、最近毎晩のように夢を見んだ」
「……え」
「優斗のせいじゃねえよ……俺の幻想だ」
違うといいたい。
亮雅さんのせいじゃない。
そんな優しさに苦しむ亮雅さんのせいで清水さんが亡くなったわけじゃないんだ。
弥生さんのことも陸のことも、俺も……
亮雅さんがいなければ、きっと人を愛する苦しささえ知らなかった。
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