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「はー、俺の弟はいつまで甘ちゃんなんだろうな」
「……本当は嬉しいんだろ。素直にいえよ」
「24にもなって嬉しかねえ」
そういいながら、克彦は俺と陸のプレゼントをそっとテーブルに置いた。
以前はものの扱い方もひどかったのに。
やっぱり素直じゃない。
「うれしかね」
「長老か、おまえ」
「ねこしゃん!」
「……なんの自慢だ」
陸は腕時計を克彦に見せびらかし、にひひと笑った。
この可愛さで人を殺せそうだ。
克彦に捕まえられ、キャーと叫ぶ陸が子猫に見えてきた。
「おっさんは仕事か?」
「おっさんって言うなよ。今日は家で休んでる」
「あー、名前忘れたわ。お前、ほんと気をつけろよ。その性格じゃ弱え男はすぐ調子に乗るからな」
「亮雅さんが弱いとでも言いたいのか?」
「さぁな。危険だと思ったらすぐ逃げろってことだ」
亮雅さんが危険……
そんなはずはないと信じている。
あの人は簡単に人を騙せるタイプでもなければ、自分の命も顧みず人助けしようとしてしまう人間だ。
危険なはず、ないだろう。
「ゆしゃんー、てて食べられた」
「ん?」
克彦の家を出て、アミューズメントストアにやってきた。
陸は怪獣のぬいぐるみに自ら手をかませている。
陸なりの構ってアピールだ。
「陸はすごいな。12点も入ったよ」
「バスケたのしい。マーちゃんといっしょ走ってるの」
「練習試合とかした?」
「しあい?」
「チーム作って闘うってこと」
「ううん、ボールなげるのだけ」
そりゃあそうか、2週間だもんな。
誠くんとバスケクラブに入った陸は毎日がとても楽しそうだ。
クラブへ行くのが一番の楽しみらしい。
ふと視線を感じ、顔を上げた。
陸と同じくらいの女の子がじっと陸を見ている。
「?」
「リクくんっ」
「!」
駆け寄ってきた女の子は、陸と目が合い頬を真っ赤に染める。
「あ、ゆーちゃん!」
「ここでなにしてるの?」
「バスケっ。ボールあそこいれるの」
「たのしそうだね」
…………ああ、これって。もしかしなくても。
恋、かな。
"ゆーちゃん"と呼ばれた子は照れた顔だ。
全然気づいていないのか、陸はあっけらかんとしている。
「ゆーちゃんちっちゃいから、ボールいれるのムズカシイね」
「ちっちゃくないもん!」
恥ずかしそうに頭突きする女の子に頬がゆるむ。
可愛い……
「優子ー、パパもう行くって〜」
「えー! ……うーん、いま行くーっ」
「おかいもの?」
「うんっ、リクくんまたバスケよんでね。ばいばい」
「ばいばーいっ」
去っていく背中を見送り、俺を見上げる陸。
少しだけ男になった気がする。
いや、大人か。
「友達?」
「おともだち。ゆしゃんとね、カンジいっしょ」
「漢字か」
「うん、むずかしいの」
「たしかに……優はちょっと、子どもには難しいな」
父親の気持ちがなんとなく分かった。
こんな感じなんだ……
我が子が恋愛をして妬いてしまう父親、なんだか俺もそうなってしまいそうだ。
「ゆしゃんのてて、たべる」
「なにしてんのー」
「カイしゃんはゆしゃん、おいしいって」
「プッ……真顔でいうか、それ」
問題児な陸を連れて家に帰ると、今泉さんは帰った後だった。
「ただいま」
「ああ、おかえり。なにもなかったか?」
料理を作っている亮雅さんに抱きつきたい衝動は抑え、コクリとうなずいた。
克彦に会うたび、いや……誰かに会うたびにここへ帰ってきたくなる。
いい意味でも悪い意味でも。
「今泉さん、会いましたか」
「会ったよ。あいつに手出されてないよな?」
「え、なんでですか」
「優斗が可愛い可愛いずっと言ってたんだよ。しばこうかと思ったけど、手は出さないってうるせえから」
「……そんな素振りなかったですよ」
嘘くさい……
俺が警戒しすぎなだけだろうが。
あの人には少し、闇を感じる。
あんな事情だから仕方ない。
でも、本当に歓迎してくれているんだろうか……
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