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お茶目
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陸が小学生になって、初めて家に友達を呼んだ。
ずっと呼びたかったようで、幼稚園の頃は許可しなかった亮雅さんも快く受け入れた。
「マーちゃん! みてこれ、陸のおともだちっ」
「わ、いっぱいいる……」
「えへへっ、かわいいともだち」
小さな子どもたちが家ではしゃいでいる光景は見慣れない。
なんだか可愛いものだ。
「こっちがイヌしゃんで、こっちカイしゃん。この子はナイしゃん」
「陸くん、ぬいぐるみ好きだもんね」
「さみしいときは、いっしょいるの。でもおしゃべりないから」
「さみしい?」
「うん」
なんなんだ、この可愛いやり取り。
頭のなかの不純物が浄化されていく。
世界一の親バカである自信さえ出てきた。
「あ、ボクおもちゃもってくる!」
思い出して2階に駆けていく陸を見送った誠くんは、なぜか唇をとがらせる。
「どうかした? 誠くん」
「っ! ……陸くん、すぐ好きっていうからやだ」
「へ?」
「クラスのおんなの子、陸くんに好きっていったら陸くんも好きってかえしたの。だからその子、"陸くんはわたしが好きなんだ"って……」
「あ……」
そうだ。
陸は恋の好きを知らないから。
「ごめんな。陸はちょっと不器用だから、みんなより何を理解するにも時間がかかるんだ。誠くんは陸が嫌い?」
「……陸くんは、ボクといっしょにいてほしい。ほかの子といるの、やだ」
「っ」
え……? それって。
「マーちゃん、もってきたぁっ」
箱を抱えた陸は今にも階段から落ちそうで、慌てて手を貸そうとした。
だがその前に誠くんが走っていって、一緒に箱を持ってあげていた。
…………紳士だな。
「あぶないよ、陸くん。コケたらいたいじゃん」
「コケなかったっ」
「ボクがささえたからね」
「マーちゃんチカラもちぃ」
だからずっと一緒にいたんだ。
なんとなく意図が分かりホッと安堵する。
「だいじょうぶ?」
「うん! ありがとぉ」
オモチャを取り出して誠くんに見せる陸はとても楽しそうで、フッと息をついてキッチンに立つ。
陸の頭をなでるとは、誠くんは亮雅さんみたいだ。
優しい旦那になりそうな……なんて。
「優斗、見てみろよ」
「はい?」
風呂から上がった亮雅さんを振り返った瞬間、唇が温かい感触に包まれる。
「__」
キスされたのだと気づくと、顔が紅潮して亮雅さんの足を踏みつけた。
「痛って!」
「っ、そ、あ、すぐ……」
「落ちつけ落ちつけ。なに?」
「……っ……ムカつき、ました」
「はは、可愛い……こういうこと、もうすんなよ」
「……」
さりげなく、傷ついた左腕をさすられる。
本当に自身がやったのかと思うほど傷跡ができていて罪悪感すら覚えている。
これじゃあ愛情ではないのに。
「もう少し器用なやり方だってあるからよ」
「ごめっ」
「そうすぐ謝らないって言ったろ? 優斗は上手い交わし方を知らないだけだ」
「……怒らないんですか、俺のこと」
「なんで?」
「だって、ひどいこと言ったのに……」
優しい視線を向けられると目をそらしたくなる。
恥ずかしさと緊張。
年上で上司だからというのも実際あるだろう。
だが、それよりも。
「俺が怒りたいのは、優斗を抱きしめた谷口の方だ」
「え」
「あいつだけは許さねえ」
「……聞いたん、ですか」
「ああ、自慢げに言ってきたよ。"椎ちゃんはオレがもらった"ってな……あいつは処刑だ」
「…………はは、は」
意味が分からないけど、谷口さんの優しさには感服する。
あの人がいなければ電話する勇気さえ出なかった。
今こうして亮雅さんといられるのも、谷口さんのおかげだ。
「お前……谷口に惚れてねえよな?」
「はい? へ?」
「さっきから何をニヤニヤしてんだぁ、このやろ」
「い、いひゃいっ……ないれす、っ」
「……くそ、いちいち可愛いんだよ。俺から離れんな」
もう一度キスをされ、愛おしさが増していく。
ふとリビングの方に視線が向くと、陸たちは仲良く座布団にくるまって眠っていた。
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