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____男が好きなんて、あり得ない。
どうして分かってもらえないんだろう。
ただ好きなだけなのに。
____私の育て方がいけなかったの? 克彦はこんな立派になったのに。
否定されなきゃいけないんだ。
俺は無能で、失敗作で、男が好きな異端者。
俺がいなければ、陸だって……
「ゆしゃん、きらいっ」
「……え?」
「やだ、ばっちいもん」
「陸……? なんで」
陸は目の前で捨てセリフを言って怒ったように2階へ駆けていった。
陸が、俺を嫌い?
胸の奥が激しく鼓動する。
嫌われたくない、陸や亮雅さんに。
慌てて2階へ行くと、部屋の前に亮雅さんがいた。
「亮雅、さん……」
「……」
「亮雅さん……?」
なにも口にしない亮雅さんは俺を一瞥すると、舌打ちをした。
「お前早くどっか行けよ」
「へ……」
「お前といると、周りから色々言われて迷惑だ。しかも鬱ってダルい。毎日毎日憂うつで帰ってくるし、まじで疲れるから帰って」
「亮……」
「お前のせいで俺たちまで不幸になんだよ。いい加減うざい」
「____」
もう望みなどなかった。
陸の声も亮雅さんの声も顔も、今そこに存在している。
手のふるえがまた起こり始める。
悪いのは俺だ。
俺がいなければ、あの女性だって悪口を言わなかった。
亮雅さんと付き合っていかなければ、陸はいじめられない。
必要がないのは俺だ。俺だけ、邪魔。
目の前が薄暗く霞んでいく。
呼吸が苦しくなってきて、ジッとしているのが苦痛に感じてきた。
怖い……ここにいることが、怖い。
俺の居場所は? 生まれた意味は?
俺は追い出された。亮雅さんと陸に悪魔だと思われている。
はやく出ていかないと……ここから。
でもどこに?
居場所がない俺は、いったいどこで生きていけばいいの。
____違う。
生きているから迷惑なんだ。
誰にも見つからない、気づかれないように消える。
そうしたら皆……っ
「優斗っ」
「ッ!!」
体が大きく跳ねた。
全身に汗をかき、呼吸がひどく乱れている。
目を開けた先には亮雅さんの顔があって、心臓がドクンと呼応する。
「す……み、ませ……いま、すぐきえ」
「優斗……どうした?」
「消える、から……許してください……も、生きたいなんて言わない、から」
「は、? 生きていい、生きていいんだよ優斗。悪い夢でも見たんだろうっ」
「っ! さわら、ないで……っ」
亮雅さんの手をはたき身を抱きしめる。
強いふるえは消えず、はやく治まれと脳に訴えた。
「はッ……はぁ、俺は失敗、作……だからっ、」
怖い。また呑み込まれそうだ。
亮雅さんと陸の怖い顔がフラッシュバックしてまぶたの奥に張りつく。
暗いから疲れる、ネガティブだから鬱陶しい、男好きだから異常。
異常異常異常……っ
「優斗やめろ、悪い方へ考えればまた苦しくなる」
「離せ、ッ……やめ、大事そうにするな!」
わけが分からなくなって半狂乱に叫んだ。
亮雅さんに抱きしめられるほど恐怖が増していく。
いっそ壊してほしい。
気持ち悪いなら、失敗作なら、異常なら壊して。
「いや、だぁっ……離せって、言ってるだろ……ッ」
「離さない」
「なんでっ」
ふるえる手を包まれて吐き気がした。
嫌だと叫んでも、亮雅さんは俺を抱きしめる。
苦しいのに。
寂しいのに。つらいのに。
「大丈夫だ……優斗は誰よりも必死に向き合ってきた。成績も業績も、お前が思っているよりずっといいんだよ。むしろ、よくなくたっていい。だから責めるな」
「ッ違う……」
「違わない。いいから、もう目つぶれ」
さっきの亮雅さんとは別人だった。
暖かくて、優しい。
どうして突き放さないんだろう、こんな俺を。
だが、とても心地よくなってしまい胸に顔を埋めて目を閉じた。
いっそこのまま、抱かれて消えたい。
こんなにも苦しい思いをいつまでしていくのか。
怖い、苦しい、悲しい。
でも全部、幻想だ。
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