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ベッドの上。
陸はずっと熟睡中らしく、布団のなかに入ってきた亮雅さんに抱きしめられる。
「やっ……」
「怖いよな、そりゃ。優斗はなんにも悪くないぞ」
「……」
「なぁ優斗、傷つく顔は見たくないから今まで言ってこなかった。でも言わせてくれ」
「なん、ですか……」
「優斗のそれは、根性論や荒療治でよくなると思えない。それに性格でもない。無理に病院へ行けなんて言わねえから、ちょくちょく絹井さんとこに顔出してくれないか」
「っ」
自分自身が1人でもできなければと思っているタイプだと、こういうときに絶望する。
それを身をもって経験した。
亮雅さんは優しく言ってくれたが、要は病気だ。
それも精神の。
「……」
「責めてない、家庭環境ってのは人を簡単に変える……だから少しでも環境を変える必要があるんだ」
「離れる……ってこと、ですか」
「違う。優斗の個性を活かせるようにするんだよ。プロの手を借りてな」
「活かす……」
「ああ、優斗は人より優しいし苦労してきたから、その分防衛本能が優れてんだよ。ただそれが働きすぎると疲れるからな……絹井さんはそれをコントロールする方法を知ってる」
俺への気遣いなのは分かっていた。
だが、救われたような気がして亮雅さんの腕を抱きしめる。
「否定、しないんですね……俺のこと」
「んな無駄なことしてる暇あったら晩飯のネタ考えるわ」
「……ぷふ、たまにはアスリート以外の食事がいいです」
「はぁ? 健康食だろ。陸は好きだって言ってたぞ」
「あの子は……なんでもそう言いますよ。優しいから」
「息子に気遣われる親ってどうなんだ。やめろよ」
依存心じゃなく愛がある。
亮雅さんの言葉はそんな強さがあって。
そっと手にキスすると、マジマジと見下ろされた。
「鬱陶しいくらいに可愛いな、優斗は」
「うるさいです……」
「好きって言え」
「……きらいです」
「素直になるまでヤんぞ」
「先に寝ちゃうじゃないですか……絶対」
「あーあ、歳は取りたくねえなー」
フッと笑った亮雅さんに深いキスをされる。
何度も角度を変えて重なり、舌が口内へねじ込まれた。
「ふ、んぁっ……」
気持ちよくて目を閉じると、下腹部をなでられてゾクッとした。
「何年経っても美人なんだろうな……」
「……いきなりどうしたんですか」
「いや、なんとなく」
そういえば、今日はおめでたい日だ。
朝日が窓から差し込んでいる。
「亮雅さん」
「なに」
「28歳、おめでとうございます」
「トドメ刺しにきたのかよ」
5月7日。
亮雅さんの誕生日。
一緒にいられるのが幸せだ。こんな大切な日に。
「____ハッピーバースデー!!」
朝食を作っていると、玄関先で大きな声が響いた。
今泉さんだ。
隣にいた陸がピクっと反応し、冷蔵庫に走る。
「ゆうしゃん! ケーキっ」
「まだいいよ、陸。朝食とってからだから」
「りょしゃん、さんじゅっさい?」
「ブフ……まだだよ。はい、あーんして」
亮雅さんが30歳だったら、年の差がすごすぎる。
現に6歳差でも俺が未成年だったら犯罪だ。
同い年がいいとか年上がいいとか考えたことはなかったが、やっぱり亮雅さんがいい。
「よっ、優斗に陸〜。今日は暇やろ!」
「……開口一番がそれですか」
「いやな? 実はテーマパークのチケットもらったねん。最大6人まで、1組ご招待ってやつや」
「テークパーマ!」
「陸、パーマはあんたの親父さんや」
テーマパーク……?
今泉さんの手元を覗くと、たしかにご招待券だ。
陸は目を光らせている。
「おいお前、わざわざご丁寧に用意してきたのかよ」
「にゃはは! せやで、亮雅はいっぺん初心に帰って楽しむ時間が必要やからな」
「余計なお世話だ……」
「ゆーえんち! おばけのおうち行きたいっ」
「しゃあねえなぁ……」
「やたぁ!」
ギクリとした。
おばけ屋敷……? 待て待て、陸は正気か?
「へ、あの……本当に行くんです、か」
「当たり前やん! なんや自分、おばけ屋敷が怖いんか?」
「なッ……そんなわけ、ないです」
「ならええやん、陸の手にぎって先導したりぃや」
おばけ、屋敷……おばけ……
逃げたい。
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