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「__アーハハハッ、めっちゃ最高やな! ジェットコースターは!」
3人が戻ってきた頃には家族連れはいなくなっていた。
まだ耳許で言われているように記憶が残っていて強引に笑顔でかき消す。
「かなり早かったですね……見てる方がハラハラしました」
「せやろ! 陸も叫びまくりやったで」
「やははぁ! 陸これ好きっ、もっかいのりたい!」
「バーカ、内蔵破裂するぞ」
テンションが上がっている陸は亮雅さんに連行される。
馬鹿だ。
俺も抱きしめてほしいなんて。
子どもじゃないのに。
「優斗ォ、気分悪いんか? ずっと調子悪いやん」
「あっ、いえ……ココア買おうとしたらトマトジュースが出てきて、萎えたっていうか」
「ぶはっ! なんじゃそりゃ、ボケとるだけやろ」
「あはは、そうですよね」
辛くなるたびに亮雅さんの手が恋しくなる。
こんなのは嫌だ。
誰かに可愛がられる子どもの時期はとっくに終わっているだろ。
「千都ー。ちょっといいか」
「なんやっ! 亮雅に名前呼ばれるんはドキッとするやんけ!」
「いいから来い」
亮雅さんは今泉さんを呼んで少し離れたところに行った。
こそこそと何か話しているようだが、陸がくっついてきてハッとする。
「ゆしゃん〜、カイゾクのやつ、いっしょのりたいなぁ」
「海賊?」
「うん。ぶわァァっておちてるやつ」
「バイキングのことか? あの船の」
「ふねの!」
笑顔ができない。
いつもどう笑っていたっけ。
頬が引きつり上手く笑えないせいか、陸は口を尖らせる。
「やだのぉ……?」
「……ううん、嫌じゃないよ。あとで一緒に乗ろうな」
どうしてこんなに弱いんだろう。
人の言葉に一喜一憂して、苦しい思いばかりする。
笑顔の練習をしろといつかに言われて何度も家で練習した。
それでも人前に出ると強ばってしまう。
森久保さんや他の女性社員は笑顔がとても綺麗だ。
印象がよくて顧客からの声も上がっている。
俺とは全然違う……
「うーっし、陸。オレともっかい乗るでえ、ジェットコースター!」
「ほんとに!」
「ああ! 入口まで駆けっこや! はよ行くぞ〜っ」
「ボクが勝つのぉ!」
今泉さんと陸がまたコースターの列に行ってしまった。
こちらを振り返った亮雅さんが怒っているように見えて、思わず目をそらした。
徐々に近づいてくる足音にビクッとふるえ、寸前で顔を隠す。
「っ……」
痺れを感じる指にふれられると背筋がゾクッとした。
怖い、亮雅さんなのに。
目をつぶった瞬間、ふわりと頭をなでられて上ずった変な声が出る。
「……」
怖い……人の手はとても怖い。
絡まる指が優しくて無意識に謝っていた。
亮雅さんはなにも言わず、俺の手を包んで擦り合わせる。
それが子どもをあやすやり方に似ていて、恥ずかしくなった。
「亮雅さんっ……」
「大丈夫だよ。誰も見てない」
「っ」
手にキスをされた。
愛おしげに俺を見下ろす視線があって、どうしようもなく胸が締めつけられる。
「優しく……しないで、ください……お願いします……」
「好きなんだよなぁ、笑顔の可愛い子」
「ッ…………それなら、可愛い女性と」
「お前が家や職場で無意識に笑ってるの……正直誰にも見せたくねえの。あの顔見た日は大抵仕事のノリがいいし、アホかってくらい舞い上がっちまう。なんでだろうなぁ?」
「! し……知らない、です」
顔が近くて死にたくなる。
亮雅さんに見られると恥ずかしい。
それにこんな場所で。
「ほんと可愛いよ、優斗。俺だけのもんにしたい」
「ッ……」
「あ、ほら見ろ。陸と今泉、手ふってるぞ」
「え……?」
ちょうどコースターに乗った2人がこちらに手をふっている。
あんなに高い位置から急速で走るのに、よく寸前まで笑顔でいられるものだ。
痺れの取れない手を亮雅さんににぎられてドクンと心臓がはねた。
「ほんと言うと、お前がビビってる顔可愛くてちょっと見たいんだよな」
「は?」
「なんつうの、保護欲が刺激されるっていうか……おばけ屋敷に脅えてるお前なんか、可愛かった」
「…………わぁ」
「引くなよ。可愛い子ほどイジメたくなるだろ」
「そういう人だと思ってました」
「思ってたのかよ」
吹き出しそうな亮雅さんに俺も笑いそうになり、顔を隠すように肩へくっついた。
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