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陸たちをベンチに座って待っている間、どうしてか亮雅さんはつないだ手を離してくれなかった。
通行人にチラチラと見られて気まずかったが、指を絡められるともうなにも言えない。
恥ずかしさと嬉しさばかりで、あまり視線が気にならなくなっていた。
「同じだろ」
「へ?」
「みんな、考えてんのは自分のことだ。たまたまここにいる俺らが手つないだって罪にはならねーよ」
「……」
それを聞いて少し安心する。
放置していた手を見下ろし、自分から指を絡めてみた。
全然大丈夫だ。
怖くないし、温かい。
「克彦とはどうなんだ? さすがに手は出してこないだろ」
「っ」
亮雅さんがそれを聞いてくるのは珍しい。
今まで、克彦の名前は余程のことがない限り自ら出さなかったのに。
「誕生日プレゼント、喜んでました。最近彼女と撮った写真を送ってきたんですけど、陸のあげたブレスレットを手につけてて。無意識でしたけど」
「そうか……」
「…………意外です」
「ん、なにが」
「亮雅さんは、許してくれないと思ってたので……克彦と会うの」
出会って初めの頃、亮雅さんは克彦にかなりの敵対心をもっていた。
それは恋愛ではなく家族としての違和感だったようだが、ふしぎと「関わるな」とは言ってこない。
母のことも同様に。
「俺にはそんな決定権ないからな。優斗もあいつも、さすが兄弟と言わんばかりに似てんだよ。お互い必要としてるくせに、不器用な愛情表現しかできねえ」
「……ゔ……それは」
「俺も人のこと言えないけどなー」
どんな徳を積んできたら、こんなに寛容な男になれるんだろう。
それほど苦労してきたのだろうけど。
ベンチにひざを立てた俺は、亮雅さんの手をそっと胸に抱きしめた。
隣にいるのに恋しくなって指にキスをすると、微かに笑われる。
恥ずかしいのに、ダメだった。
愛おしくて離せない。
「陸に見られたら怒られるな」
「……どっちが親ですか」
「あいつはゆうしゃん大好きっ子だからよ。"陸もつなぐー"とか言ってお前を独占してくる未来が見える」
「ちょっと、甘やかしすぎました。陸……誠くんのことはどう思ってるんですかね」
ふと気になったことを口にした。
誰にでも好きというが、ドキドキする対象は陸にも分かるはずだ。
誠くんが頬を赤くして教えてくれた陸への思いに、本人は気づくのだろうか。
「あんだけベッタリくっついてたら簡単には離れられないだろうな」
「……誠くんと陸が将来付き合うとか、あったらどうしますか」
「優斗はどうするんだ」
「俺は……応援したいです、けど」
「けど?」
「俺みたいな目には……遭ってほしくないです」
「……」
もしも陸が誠くんを好きになって成長した頃にそういう関係になったら俺は嬉しい。
でもそれと同時に、無難な道へ進んでほしいとも思ってしまう。
罪を犯したわけでもないのに周囲から迫害され、男を好きになったことが罪悪感を生む。
こんなに苦しいことはない。
「陸の人生はあいつが決めたらいい、そのうち分かるだろ」
「心配してないんですか」
「しないな。相手が男だろうと好きになったもんは事実なんだから、他人にどうこう言われる筋合いもない」
亮雅さんとは考え方が正反対だと感じた。
似ていると谷口さんは言っていたが、俺にはそんなふうに考えられない。
周りの目線が気になって、それに合わせようと思ってしまう。
また落ち込みそうになっていると、亮雅さんの指に頬を挟まれた。
「そう暗い顔すんな。お前は素直に気持ちいいって言ってればいいんだよ」
「! そ、そういうこと……なんで平気でっ」
「余計なこと考えるから憂鬱になんだ。陸なんて考えてるように見えてなんも考えてないぞ」
「陸だって考えてますよ、きっと。俺や亮雅さんを元気にしたいって」
「そんなこと年中考えてるわけないだろー? まだ5歳だぞ、あいつは単に構ってほしいだけだ」
髪をくしゃくしゃにされて照れ臭さで目を伏せる。
変に真面目な顔をしない亮雅さんには救われる。
俺の考えすぎだと分かると、ふっと心が軽くなった。
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