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「____ほんっとにすいませんッ!」
「だから全然いいって」
翌朝になって、優斗は顔色を真っ青に土下座してきた。
理由は単純で誕生日の夜に渡す予定だったプレゼントを当日渡せなかったこと。
別に28のオッサンが誕生日プレゼントをせがむはずもないが、優斗はどうしても渡したかったらしい。
……まぁ、見たんだけど。
プレゼントの箱。
一応、俺はプレゼントの存在を知らないということになっている。
だから大げさに驚いてみようかと思ったがやめた。
優斗はたまに察しがよくて恐らくバレる。
「お前の笑顔とキスだけで十分プレゼントになるし」
「…………それは、いやです」
「なんでだよ。恋人だろ」
「誕生日って、年に1度じゃないですか……そんな特別な日に、日常的なものより何か渡したいって思うのは……普通だと思います」
俺の反応をうかがっているのか消極的だ。
チラチラとこちらを見る優斗は陸に似て見える。
「はぁ……お前には毎度混乱させられる」
「え、あの」
「悪い意味じゃねーよ。俺のために用意してくれたんだな……ありがとう」
「っ、俺が……渡したかっただけ」
「なにそのかわい子ぶり。普通に可愛いんですけど」
目の前であぐらをかいて抱き寄せる。
火照った体は暖かくて心地いい。
「ありがとな」
「……でも中身、百均ですよ」
「ぶふっ」
これが俗にいう天然だ。
優斗は自分をなんだと思っているのだろう。
ムードもぶち壊す発言に笑いが堪えられない。
「百均のために土下座するのか」
「……し、します」
「おもしれえな。あと、そのカーディガン気に入ってんの? 俺は嬉しいけど」
「!」
プレゼントの箱を開けながら優斗をチラ見する。
前から気に入ってくれているようで、家にいるときはずっと羽織っている。
あまりの愛おしさでなにも言わなかったが、谷口にもとっくにバレていたらしい。
「寒いんで」
「本当に?」
「寒いってことで。いいじゃないですか」
「威圧的だな……お、万年筆じゃん」
案の定、どう見ても百均ではないものが出てきた。
万年筆にシルクのネクタイ。
優斗は嘘をつくのが下手くそか、今に始まったことではないのだが。
「百均ってこんなイイもん売ってんだなー」
「……最近の百均、馬鹿にしたらダメですよ」
「シルクディーセブンねえ」
『Silk'd Seven』といえば、ネクタイや革製の鞄を取り扱っているブランドだ。
まさか俺が知らないとでも思っているのか。
「なん、なんですか。その顔」
「いや? 優斗お前、実はオシャレ好きだろ。パッと見そういうふうには見えないけど」
「……」
あ、むくれた。可愛いなぁ……
頬を摘みたい欲は抑え、さらさらと流れる髪にふれた。
天は二物を与えたようだ。
男さえ目を惹く容姿のうえに、不器用だが頭の回転が速い。
本人が自覚して分析をし始めれば俺もいつ経理課勤務として先を越されるか……
自覚さえすれば、だが。
「明日……陸の参観日で。また俺が行きます」
「無理しなくていいんだぞ。早見と相談して俺も休みを」
「いえ、行かせてください。陸の成長を間近で見たくて」
「……」
「嘘じゃないです。本心でいってます」
「なにかあったら絶対我慢するなよ? 伝える相手は担任でも俺でもいい。1人で抱えないと約束してくれ」
「……わかりました」
安堵して微笑んだとき、テーブルに投げていたスマホが着信音を鳴らして存在の主張をしてきた。
相手は絹井さんだ。
何事かと思い、優斗に目配せして通話ボタンを押す。
「はい、松本です」
『あ、おはよう松本くん。佐々木に聞いたんだけど、昨日誕生日だったんだって?』
「ええ。おかげさまで28ですよ」
『おめでとう。急だけど、友人がいいスポットを紹介してくれてね。椎名くんも一緒に釣りなんてどうだい?』
今日は平日で陸は学校に行っている。
ちょうどいい連休なのだから、羽目を外すのもいいかもしれない。
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