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「陸、喜んでたぞ」
洗面台に並ぶ小さな人形を眺めていた。
松本家の脱衣場は銭湯の更衣室と似ていて全面張りの鏡が壁に固定されている。
鏡越しに亮雅さんと目が合うと恥ずかしくなってそらすが、背後から抱きしめられて心臓が止まりかけた。
「ッ! り……陸は、なんて言ってたんですか」
「ゆしゃん大好き〜だってよ」
「…………それ、いつも言ってます」
「はは、こんな美人な父親なんて羨ましいもんだよ」
「っ……」
そういえば、陸はどう思ったのか。
俺が本当の父親ではないと知って、悲しかったんだろうか。
本心では憎んでいないだろうか。
「……亮雅、さん」
「なに?」
「陸……俺が本当の父親じゃないって知ってます。なにも、言ってませんでした?」
「……」
答えがほしい。
どうしてもその答えが知りたいと思う。
「なにも言ってなかったよ」
「そ……」
「それが、あいつの応えってことだろ」
「え?」
「優斗、人間は口で言うことだけが全てじゃないんだ。本当に文句でも言いたいなら、口で言う前に態度で見せてくるはずだ。子どもなんだからな」
「俺のこと……認めてくれてるんですか、ね」
「それ、今さらすぎ」
チュ、とリップ音が重なって温かい感触に包まれる。
ドクドクと脈打つ鼓動は耳許で聞こえ、徐々に速度を増していく。
キス、したい。もっと。
「亮雅さん……」
「風呂、一緒に入るか? 優斗」
「っ…………入って、あげてもいいですけど」
「うわ、急に強気だな。いつも余裕なくなるくせに」
「ばっ……! そんなこと、ありません! 余裕すぎて亮雅さんの安否を気にしてるくらいですからっ」
鏡に映る自分が耳まで真っ赤になっている。
とっさに腕で顔を隠せば、背後からの手に阻止されて俯いた。
「顔、上げろよ」
「嫌です……」
「優斗の髪……すげーいい匂いすんな」
「っ、やめてください……そういうの」
「……今日はお前を抱きたい気分なんだけど、駄目?」
「ッ!!」
俺の好きな柔軟剤がふわ、と香って呼吸の仕方を忘れる。
やばい……本当に死ぬ……っ
もうずっと一緒にいるというのに、"そういう"行為の雰囲気になるといつも挙動不審になってしまう。
「い……痛く、しないで……ください」
「ふっ、分かった」
耳に這う唇にビクッと肩が跳ね、優しく指を絡められていく。
「……っ」
「怖がらなくていい、優しくするから」
「あ、あの……できれば、俺の顔……見ないで、ください」
亮雅さんの視線を鏡越しに感じて顔を上げられない。
俺の好きが詰まった容姿で見つめられると心臓発作を起こしてもおかしくない。
「何回もヤッてんのにまだ慣れねえのな」
「ッ……だ、だから慣れるわけ……」
「まぁ俺も毎回、心臓うるせえけど」
「亮雅さんが、?」
「当たり前。誰よりも繊細で感じやすい優斗を乱暴に扱えるはずないだろ?」
は、恥ずかしすぎる……
繊細ってなんだよ。感じやすいってなんだよ。
乙女かよ、俺は……っ
そして亮雅さんは英国の王子様か。
男でありながら自分の傷つきやすい性格に絶句する。
だが同時に、それほど俺のことを考えているという事実が発覚して胸の高鳴りは頂点を極めた。
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