アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
❖
-
「はい、優斗きゅん。あげるよ」
「……1回死ぬ?」
「なんでよ。ノリ悪いなぁー」
レモン味のスポーツドリンクを受け取って花壇に腰かける。
隣に俊太が座り、不器用に口笛を吹き出してわらいそうになった。
「下手……」
「もうちょいなんだよー! あとちょっとで吹けるのにぃ」
「……俊太ってポジティブだよな、怖いくらい」
「そう? 別に意識してないけど、優斗がネガティブすぎなんじゃね〜」
「本当にそう、だよな。なんでこうなんだろ……」
昔からポジティブに考えるという能力が皆無だった。
なにかあればすぐに疑い、引け目になる。
意識してポジティブ思考をしていればすぐに疲れてやる気をなくしていた。
「んー、それは性格の違いだしおれは全然いいと思うけどね。ネガティブな人ってさ、頭いいじゃん。優斗は責任感と警戒心強すぎだけど」
「……うん」
「おれ、ポジティブの方がいいみたいな考えはあんま好きじゃないな。いいじゃん、優斗には友達がいるんだし」
その考えができるのも俊太の良さなんだと言うのはやめた。
たしかに性格に優劣をつけるのはおかしな話だ。
「優斗のいいところはねー。仕事の覚えが早いとこ、顔がいいとこ、人の気持ちを考えて行動するとこ、頭の回転早いとこ、可愛いとこ」
「わ、分かったから! 褒めなくていいし!」
「あはは、照れた」
「っ、慣れてないんだよ」
「おれが父親だったら溺愛してた自信あるのにな……なんて、優斗の父さんに失礼か」
俺の父さん……
思い返してみても印象が薄い。
いつも母の言いなりのように隣にいて、怒鳴りもしないし笑いもしない。
まるで感情の分からない人だった。
「……やっぱり、まだ仲悪いの?」
「父さんとは、ずっと連絡とってない。俺には興味ないんだと思う……小学校の頃から印象がないんだ」
「そっか……あんま触れちゃいけないと思ってたから、話してくれると思わなかった」
「なんでだよ。別にそんなナイーブじゃないし」
もう一度会いたいかと聞かれても、正直会いたくない。
何度会ったところで同じことの繰り返しだ。
母と同じように。
「おれもさぁ、親とは別居してて婆ちゃんと暮らしてるけど、元旦も会ったりしないんだよね。申し訳程度に仕送りがきたりはするけど」
「俊太は、仲いいのかとおもってた」
「悪くはないよ。でも、連絡したら忙しいからって返ってくるし、たまに連絡きても会いたいとは言われないし。おれ寂しがりなのに」
「……なに、急にかわい子ぶるじゃん」
「あーっ、優斗までそういうこと言う〜? 素直に言ってもいいじゃーん」
「暑い、くっつくなよ」
「やーい! 暑くしてやるー!」
「やめろっ、ガキか!」
ヘラヘラ笑っている俊太を引き剥がしてため息をつく。
本当に陸がそのまま大きくなったみたいだ。
22歳児、恐るべし……
「律に聞いたんだけどさー、優斗って酔うとめっちゃ甘えん坊になるんだってな」
「ッ! ま、抹消しろ! 今すぐその記憶を忘れろよ!」
「うあぁっ! 肩揺するなっ、なんで? 甘えん坊とか可愛くね」
「可愛くないわ……キモいだろ、誰だよそれ」
俺が、甘える……?
寒気がする。ネジが外れたとしか思えない。
「ほわほわした顔で"たこさんだぁ"とか言ってたんだって。想像しただけで可愛いんだけど」
「だ、だからそれは俺じゃない。そんなやつ知らないっ」
「現実から目をそらすなよ。おまえはそういうやつだ」
「諭したように言うな!」
なにが「たこさんだぁ」だよ!
意味が分かんねえ……っ
でもよく考えてみれば亮雅さんの前では甘えたいと思っている自分もいて。
「やっぱり俺……調子に乗りすぎ、? 亮雅さんの優しさに甘えすぎなんじゃ……」
「こわっ、その思考は怖すぎ。むしろもっと甘えろよ、主任は優斗にひたすら甘えてほしそうだったよ」
「……本当に?」
「うん。優斗が甘えてくれたらそのうち嬉しさで死ぬと思う。2人のラブラブ感すごいし」
職場でとっくにバレている気がしてきた。
もういっそ堂々としていればいいんだろうか。
亮雅さんに思い切り。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
97 / 231