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俺のペースに合わせると言いながら涼しい顔でジョギングコースを先導する俊太に危うく殺されかけた。
陽気なやつはやっぱり信用しないと胸に誓い、小町の大広場で休憩をとる。
「あの子かわいい。美少女じゃん」
「え」
「ほら木の下」
「……本当に女好きなんだな」
「えー、そう言ったしぃ。恋愛感情持ったことないけど」
「嘘つけ」
「ほんとだって! 可愛いって思っても彼女になってほしいとか全然思えなかったし、すぐフラれたよ」
人間はつくづく変な生き物だと思う。
なんて言ったら亮雅さんに笑われそうだ。
「そんなやつが、なんで俺なんか……」
「なんだろ……主任に同情する」
「なにが」
「大変そうだなって」
悪口だろ、それ……
「でも優斗が自信満々だったらNASAとかにでも就職してそうだから、おれは今のままがいいなぁ」
「どんなイメージだよ。そういや、帰るときに陸のケーキ買いたいんだけど」
「え! 誕生日?」
「そう明日。プレゼントはもう買ってるけど、ケーキはまだだし」
「もうパパじゃん……! 陸しゃんかわいいよな〜。ててちっちゃい」
「はは、亮雅さんはしつけの要領も分かってるけど俺は全然だから、強く叱ったりできないんだよ。それもよくはないから……」
甘やかしてばかりがいけないのも分かってる。
そう思っていても陸の落ち込んだ顔には弱くてかなわない。
「結構大変なんだな、子育てって」
「うん。……あー、涼しー」
梅雨時期の蒸し暑さがまだない今の気候はジョギングにもってこいの涼しさだ。
冷たい風も吹いていて、頬を掠めるたびに心地いい。
「……ほんと美人だよな、優斗って」
「やめろやめろ。まったく嬉しくない」
「おれも優斗と同じ髪色にしようかなぁ」
「情緒不安定か? いつの間にか金髪じゃなくなってるし」
「んー、色落ちしたからアッシュにしたんだよ。でも茶髪の方が似合うって律に言われてさぁ」
あの律が言うことだから出任せなんじゃないかと普通は疑う。
だが、たしかに俊太はダーク系よりも明るい髪色が似合っている。
というか……なんで律は茶髪の俊太を知ってるんだ。見たことないはずだろ。
「律になんか見せたの、写真とか」
「うん! 友人との自撮りとかいっぱい残ってるし、それ見せた」
「やっぱり陽気なやつのやることはすごいな……」
「じゃあ自撮りしよ! これで優斗も仲間入りだ〜っ」
「わ! や、いいって! 自分の写真とか、生理的にムリっ」
「おーい! 全国の優斗ファンに謝れ!」
肩を寄せてきた俊太が「笑って笑って!」とスマホの画面をこちらに向ける。
そこには俊太と俺が映っていて、カッと頬が熱くなった。
「ほい撮れたっ」
「っ……やっぱムリ」
「あははぁ、優斗ほんとに写真苦手なんだな。めっちゃ照れてるよ」
「早く消してくれっ」
「消さないよ! こういうのさ、いっぱい撮ってた方がいいんだよ。じゃなきゃ絶対後悔する」
「……」
だからって自撮りとか。
よく見る男子高校生のノリじゃないか……
でも、友人とこうして写真を撮るのは、ちょっと嬉しい。
「えっへへ〜、思い出が増えたぁ」
「…………ありがと、な」
「へ? なにが」
「その、友達に……なってくれた、こと」
子どものようなノリで明るく返されると思っていたら、俊太は無言のまま明後日の方向を向いてしまう。
「いや、あの、こういうこと言うのは変なんだけど……」
「…………大事にしたいから」
「え?」
「たとえ付き合えなくても、優斗とは親友になりたい。何年経ってもふざけ合える仲でいたいって、思って。おれの方こそ、好きだって言ったのに縁切らないでいてくれてありがとう」
「それは」
「優斗のさりげない優しさが人として好きなんだよ、おれ。だからピンチの時は絶対手を貸すし、どんどん頼ってほしい」
真剣な表情で言われると恥ずかしくなる。
目をそらして「ありがと」と言うと、俊太は満足そうにハハっと笑った。
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