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❖危機 -side 松本亮雅-
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昼上がりの仕事を終えて帰宅しようとしていた俺は、スマホに届いているメッセージを見て愕然とした。
『浮気していたなんてあんたは最悪です。もう別れてください、話もしたくありません』
そのメッセージはあろう事か優斗から送られてきている。
あり得ない内容に焦りを覚えて身支度を整えると急いで自宅へ戻ったが、そこは違和感だらけだった。
鍵は開いたままで、キッチンには作りかけの料理が放置されている。
それに優斗の荷物も全て置いてあった。
どうなっているんだ……?
そもそも俺は誓って浮気をしていない。
釣り場で出会った女につけられて迷惑したことはあったものの、優斗を怒らせることは一切していないはずだ。
優斗がなにを聞いたのか、なにを見たのか、俺にはまるで分からなかった。
「どこに行ったんだ……」
スマホに電話をかけてみれば、電源が切れているとアナウンスの声がした。
嫌な予感がする。
心臓が嫌な音を立てて、真っ先に電話をかけたのは浅木だった。
俺以外で優斗に一番近い男は浅木しかいない。
『____は、はいっ? 主任ですか、どう……されました?』
「浅木、今日優斗に会ったか?」
『え? いえ、会ってないですけど……優斗がどうかしたんですかっ』
「いや、なんでもない。知らないなら大丈夫だ」
『へ』
浅木が優斗を騙して別れさせようとしたとはとても思えない。
口調からしても浅木は嘘を言ってないように思えた。
本当に知らないのだろう。
だとすると、兄か父親の元だろうか。
電話番号を聞いていないことに後悔する。
どうしようか…………考えろ。
冷たい汗が額に流れた。
たしか優斗はスケジュール帳を持っていた。
2階に駆け上がり、寝室を覗くと優斗の通勤用カバンが投げられていた。
やっぱりおかしい。
話もしたくないのなら、なんで物が全て置いてあるんだ。
嫌な予感は加速していく。
カバンにはスケジュール帳も投げられていて、裏表紙から開いた。
マメな性格の優斗なら書いてあるはずだと一縷の望みをかけた。
すると奇跡的に、『克彦』の連絡先が記してあった。
突然知らない番号から掛かってきても出ない男ではないだろう。
優斗と克彦は似ているが少し違う。
記された番号にかけると、数回コールが鳴って繋がった。
『はい、椎名ですけど』
「克彦かっ? 俺だ、松本だ」
『……は? なんで優斗の彼氏が俺にかけてくんだよ。新手のオレオレ詐欺か?』
「違うっ。なぁ、優斗がそっちに来てないか? スマホが繋がらないんだ」
『あ?』
俺の慌てぶりに察したのか、克彦は声色を変えた。
『来てねえよ。……つか、優斗になにがあったんだ』
「……分からない」
『分からないってなんだよ! お前っ、俺から奪っておいて優斗が急にいなくなったとか言い出したら許さねえぞ』
「状況が掴めないんだよ、俺にも。誰かがあいつに嘘の情報を流して連れ出した可能性があるんだ……っ、悪いが協力してくれ。頼む」
『っ……』
もしも優斗の身に何かあったら、と思うと恐ろしい。
一体誰があいつに嘘を教えたんだ。
『身に覚えあるやついねえのかよ。最近会ったとか、お前の友人とか』
「……優斗に連絡を取れる人間は限られてる。俺は全員に当たる。克彦の父親がこっちに来てるだろ? 優斗が来ていないか聞いてくれないか」
『チッ……分かったよ』
「すまない、ありがとな」
一度は叱責した相手とはいえ、今は頭が上がらない。
一刻も早く優斗の安否を確かめなければ。
谷口や絹井さん、早見に桜田と優斗の連絡先を知っていそうな人間に確認をとったが、誰も優斗に会っていなかった。
通話を終えたとき、克彦から電話がかかってすぐに出る。
「どうだった」
『親父んとこにも来てねえ。連絡もとってねえよ』
「そうか……くそっ」
『あんたはどうなんだ』
「ああ、俺も……」
言いかけて、ふとやめた。
優斗に電話をかけそうなやつがまだ残っている。
「……悪い、またかけ直す」
一旦通話を切って、まさかと思いながら今泉に電話をかけた。
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