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❖危ない夜
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結局、陸は合計5匹もの魚を釣り上げた。
俺が釣れたのは2匹だけだったが、陸のはしゃいでいる姿を見るとこちらまで嬉しかった。
日が暮れ始めた頃に火を焚き、バーベキュー用の肉類をテーブルに並べていく。
「さっきの魚は管理人が捌いてくれるそうだ。優斗、俺がやるから少し休んでいいぞ」
無心で炭を仰いでいると扇子を取られ、くしゃくしゃと髪をなでられる。
「……一応、大人ですよ。俺だって」
「知ってるよ。可愛い恋人って甘やかしたくなるもんだろ?」
「っ! ……テント、行ってきます」
「おう、陸のこと頼んだぞ」
なでられたところがジンと熱い。
心做しか鼓動も早い気がする。
やっぱり苦手だ。恋愛なんて。
テントを覗くと、扇風機に当てられた陸がすやすやと眠っていた。
「……はしゃぎ疲れたんだ」
朝からテンション高かったもんな。
微かに笑みをこぼして陸の髪をなでる。
陸は亮雅さんの子どもだ。
でも、弥生さんの血も流れている。
それは多分、ずっと忘れられないだろう。
「ごめん……陸」
隣に寝転び、そっと目を閉じた。
____
それから何分が経ったかは分からない。
突然に目が覚めて起き上がると、隣に陸の姿がなかった。
「……あれ、? 陸……外行ったのかな」
テントの外はすでに暗くなっている。
亮雅さんの元へ行ってみると、木製のベンチで眠っていた。
そこには陸の姿がなくて「え」と声が漏れた。
「亮雅さん、亮雅さん」
「……ん? どうした……」
「陸、知りませんか。テントの中にいなくて」
「は? 数分前までテントにいたはずだぞ」
サッと血の気が引いていく。
こんなに薄暗い中でどこに行ったというんだろう。
しかも1人で。
「っ……俺、下を探してきます」
「あ、ああ。俺はログハウスに行ってみる」
鼓動が激しく鳴り出す。
どこだ、どこにいるんだ陸。
広い平野を見渡しても人影はない。
階段を駆け下りて滝の傍を見てみるが、薄暗くてよく見えなかった。
「……っ、スマホが……」
スマホを取り出してライトで照らす。
すると滝のすぐ傍に見覚えのある靴があった。
「!」
それは紛れもなく陸のもので、魚のバッジもついている。
ま、さか……落ちた、?
ゾッとして首を振ったが、動揺は解けることがない。
「陸! 陸っ! どこにいるんだ!」
叫ぶように声を上げても、辺りはシンと静まり返っていた。
胸が苦しくなる。
俺が寝たせいで……
俺が、目を離したせいで……っ
苦しさにムチを打って川沿いを走った。
何度も名前を呼びながら駆けて、ちょうど下流付近にたどり着いた頃だ。
川辺に人が倒れている。それも暗がりで分かるほど小さい。
「陸っ……?」
迷わず駆け出して倒れている人影にライトを当てた瞬間、全身の力がすっと抜けた。
「り、く……」
倒れていたのは陸だった。
青白い顔をして、全身が濡れたまま意識をなくしている。
「陸ッ!」
体を抱き上げてみたが、陸は息をしていない。
嘘だ……嘘だ。
「陸、やめてくれ……っ、目を覚まして、お願いだ……ッ」
ひどく冷たくなった体に生気はない。
俺が……殺した。
「うあぁぁぁぁッ……!!」
悲痛に叫んだとき、突然視界が真っ暗になって体を大きく震わせる。
「ッ!!」
再び目が覚める感覚で飛び起きた俺は、テントの中にいた。
「っ、はー……はぁ……な、に……」
隣に視線を落とすと、川辺で倒れていたはずの陸がすやすやと眠っている。
激しく鼓動する胸を手で押さえて大きく息を吸った。
夢だった……
陸は、生きてる。
「っ……」
震える体を抱きしめて安堵する。
ひどい夢だ。
現実的で恐ろしい。
陸の髪にそっと触れたとき、外から亮雅さんの声が聞こえてきた。
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