アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
❖
-
「陸、起きて。夕飯食べるよ」
何度か揺すって目を覚ました陸は、まぶたをかきながら伸びをして起き上がる。
「ごはんー……」
「うん、揚げものもあるからおいで」
「ハムくんもいこぉ」
夕暮れは徐々に青みを帯び始めている。
外で夕食をとる家族連れが多いようで、広場は観光客で賑わってきていた。
「からあげ〜っ」
「夜は星がよく見えるそうだぞ。もう出始めてるな」
「あ、本当ですね。望遠鏡持ってくればよかったな……」
「管理人に言えば貸してもらえるだろう。ほら陸、深皿落とすなよ」
「パパ、ハムくんのごはんはぁ?」
「ほらよ、これ入れてやれ」
売店で買ったらしいカットバナナを受け取った陸が虫かごに入れると、ハムは飛びつくように食べ始めた。
「んふふ、おいしーね」
「……陸はいい飼い主になりそうだな。ハムも喜んでるよ、きっと」
「陸はハムくんのパパだもんっ、おせわいっぱいする〜っ」
「とか言ってベタベタ触りすぎたらいけないぞ?」
「あいー。あぁ! きのこ!」
細く切った松茸をひっくり返した途端に陸が欲しいと強請ってきた。
滅多に食べることのなかった松茸も亮雅さんと出会ってから何度か口にしている。
こんなにもらうばかりで本当にいいのかと時々不安になるレベルだ。
「____あなた、もしかして優斗くん?」
「……え?」
こちらに歩み寄ってきていた見知らぬ女性に声をかけられて唖然とする。
誰だ、この人……
20代であろうその女性は髪をポニー風に1つにまとめ、薄めのメイクをしていた。
どこかで会った記憶がない。
「……あ、あの、どこかで?」
「まぁっ、やっぱり優斗くんなのね! お兄さんにいつもお世話になってます」
にっこりと微笑んだ女性の一言に硬直した。
え、この人って……
「もしかして……克彦の彼女の」
「ええ、厚井まどかです。突然ごめんなさい。女子旅に出てきていたんだけど、克彦が見せてくれた写真の子とそっくりだったからつい声をかけちゃった」
「こちらこそ、兄がお世話になってます……」
元キャバ嬢と聞いていたからもっと派手な女性かと思っていたが、清楚で綺麗な人だった。
あの克彦が本命だなんて、十分すごい話だけど……
女性が苦手な陸は珍しく隠れようともせず、目を瞬かせている。
大好きな克彦の知り合いだから大丈夫と認識したんだろう。
「お邪魔してすみません。あなたは松本さんですよね? 克彦からお話は聞いています」
「そうでしたか。以前、克彦に世話になったことがあって、よろしく伝えてほしいな」
「もちろんです。ここは夜になると少し肌寒さが出てくるそうなので、もし冷えそうならあそこのログハウスで毛布を借りてください。それではまた」
ぺこりと深くお辞儀をして、彼女は仲間の元へ戻っていった。
あの礼儀正しさが克彦に伝染したのか。
「かしゃんのおともだちー?」
「恋人だよ。って、陸にはまだ分かんねえか」
「綺麗な人、ですね」
無意識に呟くと、突然頬を摘まれて変な声が出た。
「うぇっ」
「綺麗だからって見とれんなよ?」
「み、みとれてまへぇん」
相手は女性だし。
「ふーん。まぁいい、克彦のやつもまともな彼女を見つけられたんだな」
「……そうですね。よかった」
「お前ほんと性格よすぎだろ。もっと適当にしろよ」
「よくないですから……というか、地味に痛かったです」
「ざまーみろ」
な……
フン、と軽く鼻を鳴らす亮雅さんにちょっとだけムカついた。
なんなんだ、俺が亮雅さん以外に見とれるわけないだろ。
……って、絶対言わないけど。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
125 / 231